ガソリン返せ(★)(再録)(和愁)

 空閑の幼馴染の虎石和泉は、よく空閑からバイクを借りていく。バイク以外にも色々借りていくが、一番頻度が多いのはバイクだ。返ってくるときは、だいたいガソリンは入ってない。その代わり満面の笑みで、サンキュ♡と言って来る。
 まあ俺相手だからいいものの、と空閑は考える。
 俺みたいに心の広い人間が相手じゃなかったらお前縁切られても文句言えねえし、下手したら中学の時みたいに悪いのに囲まれてあわや警察沙汰、なんてことになるぞ。それはまずい。どれだけどうしようもない幼馴染であっても、俺には替えが効かない男だ。
 さて、どうするか。よし、そろそろ釘を刺そう。
 そこで空閑は、学校も新学期に向けて休みとなった春休みに、とある作戦を決行することにした。

「……あのさ、愁」
「なんだ、虎石」
「ナニ、これ……?」
 虎石家の、虎石和泉の自室。そのベッてドの上に転がされた虎石が困惑の声を上げる。それもそうだろう、今虎石は、両手首をベッドのパイプにロープで繋がれた上で仰向けにされているのだ。その上虎石の部屋のドアにはしっかりと鍵が掛けられ、虎石の両親は夜まで帰ってこないという確認まで取ってある。つまりこの家にいるのは自分達二人きりだ。
 空閑はベッド脇に立ち、虎石を見下ろす。
「何って、見ての通りだ。お前を縛った」
「いや、縛られてるのは分かるけどよ……?」
 虎石の声がやや震えている。恐怖を感じていることを隠そうとして隠し切れいていない声だ。背中がぞくりと粟立ち、空閑は思わず唇をぺろりと舐めた。それを見た虎石の身体がびくりと震える。
「簡単な話だ、そろそろお前にお仕置きでもしてやろうかと思ってな。もうすぐ進級することだし」
「お、お仕置き? は?」
「ま、痛い目遭わすのも可哀想だしな。こんな時に顔に傷でも付けたら学期明け早々月皇に怒られちまう」
「愁、お前どうしたんだよ、なんか変だぞ」
 変? 上等だ。だとしても、お前相手じゃなきゃここまでのことはしない。お前喜ぶだろ? お前だけとか、そういうの。
 空閑は「お仕置き」の準備を始めるべく、虎石の机の引き出しを漁り始めた。勝手知ったるもので、目的のものはすぐ見つかった。透明の液体のようなものが入った、ピンク色のキャップがはまった、掌に収まるくらいの大きさの小瓶。ローションというやつである。
 それを認めた虎石がぎくり、となるのが気配だけで分かったが、お構いなしにローションの隣におさまっていたものも同時に引っ張り出す。リモコンとコードで繋がったローター。ローター自体はそれほど大きいわけではないが、突起のようなものがいくつも付いた不思議な形状をしている。今まで何度これに泣かされてきたことか。
 空閑はそれらを両手に持って、虎石に跨がるようにしてベッドの上に乗った。
「し、愁……」
 怯えるような声をあげ始めた虎石にはお構いなしに、空閑はローションとローターを脇に置き、虎石のベルトのバックルに手を掛けた。抵抗するように身をよじる虎石に、また背中がぞくりとなった。その腰を押さえつけて無理矢理ズボンを脱がすと、グレーのボクサーパンツが露になる。
 空閑が顔を上げて虎石の顔を見ると、その顔は恐怖で強張っており、目には涙も溜まりつつある。
 少し怖がらせ過ぎたか、と思いながら、空閑は右手にローター、左手にリモコンを取り、とりあえずリモコンの電源スイッチを押してみる。ブィイイイイン、と音を立てながらローターが小刻みに、しかし力強く震動した。その音に虎石がひっ、と怯えて息を飲む。震動の強さをかちかちと調整して、5段階ある震動のそれぞれの強さを確かめたところで、空閑は一旦ローターを止めた。
 またローターを置いて、身を屈めると怯えた表情をした虎石の頬を優しく撫でながら言う。
「大丈夫だ、酷いようにはしねえよ」
「もうされてんだけど……んんっ」
 ごちゃごちゃうるせえ。噛みつくようにキスをして、虎石を黙らせる。
 唇を舐めて開かせ、舌を差し入れると虎石のそれをねっとりと絡め取り、擦り合わせる。
「んん、ふっ……ぅう」
 舌を絡めるだけでなく、口の中の色んなところを舌先でつついてやる。空閑が刺激を与える度にひくひくと震える虎石の体からは、少しずつ力が抜けていく。空閑は虎石のものが勃ち上がり始めているのを腰に感じ、喉の奥で笑みをこぼした。虎石の性器をボクサー越しに撫でると、虎石はくぐもった声を上げながらびくんと一際強く体を震わせた。
「可愛いぞ、虎石」
「ん、はぁ……るせぇ……」
 キスをやめて囁いてやると、虎石は顔を真っ赤にして目を反らした。空閑はすかさず虎石の耳に口を寄せてくちゅ、ぺちゃ、とわざと音を立てながら耳の中を舐めた。ペニスへの刺激はやめてやらず、下着の上から撫で上げたりやわやわ揉んだりしてやる。
「ぅう……愁、も、やだぁ……ひぅ……」
 虎石の腰が揺れ、涙混じりの声には甘やかなものが混ざり始めていた。虎石の顔を見ると、頬は紅潮して目は潤み、目尻はとろりとなっている。
 そろそろか。空閑は体を起こすと、虎石の足を掴んで浮かせ、ボクサーパンツを優しく脱がしてやった。
 下半身のものを全て脱がされ、その上両足を開かされた状態で虎石はぐずぐずと泣く。
「愁、も、やめ……」
 しかし空閑の耳に、その言葉は届いてはいなかった。虎石の足の間に屹立する、先走りで濡れててらてらと光る、赤黒く立派な男根。空閑はあれを己の口いっぱいに含んだ時のことを思い出して、口の中に唾がわくのを感じて唇を舐めた。
 くわえたいがどうするか、と少し考えてから、今日はいいか、と思い直し、とりあえず自分のズボンと下着をさっさと脱いで床に放る。
 ベッドの上に放り出していたローションを手に取ると、片手の指全体にローションをぐちゃぐちゃと擦り付ける。
 そしてローションを垂らしていない方の手で虎石の片足を持ち上げ、そのアナルにローションで濡らした中指を差し込んだ。
 虎石とセックスする時は空閑が女役になりがちである。しかし虎石とて女役の経験がないわけではないのだ。空閑の中指は思ったよりもスムーズに虎石の中に入り、虎石のアナルは空閑の中指に吸い付くように蠢いた。
「ゃっ……あ、んぁ、」
 ぐにぐにと指を動かすと、虎石は熱に浮かされたような声を上げながらびくんびくんと体を震わせた。そして無意識なのか、中が空閑の指にもっと当たるようにか、腰をゆらゆら揺らし始める。
 空閑は人差し指を入れて、少しずつ虎石のアナルを拡げ始めた。
「なん、あ、やらぁ……!」
 ほとんど舌が回っていない虎石にぞくぞくして、空閑は思わず二本の指をぐちゅぐちゅと出し入れする。
「ひ、むり、ぅうう、あ、やめろ、そこ、んあっ!」
 がくがくと腰を震わせる虎石を見ているとなんだか楽しくなってきて。やだ、むり、とぐずぐず泣きながら言う虎石に思わず笑みを溢しながら、空閑は虎石のアナルを広げる手を止めない。自分が虎石に指を入れられて感じるところを責めてやると、虎石の体は面白いようにびくんびくんとしなる。
「気持ちいいだろ? 虎石」
「ひぅうっ、う、やら、もうやらぁ、」
 顔を真っ赤にして顔を涙で濡らしながら虎石がやめて、と懇願するのが聞こえたが、空閑はわざと聞こえない振りをして虎石のアナルを拡げたりいじめたりを繰り返した。
 しかしたっぷりじっくりと拡げられた虎石のアナルはもうローションでどろどろで、隙間を埋めるものを求めるようにひくついている。そろそろか、と思いながら空閑は指を引き抜いた。
 空閑は虎石に見せ付けるようにローターを手に持つと、とろとろとローションをかけていく。虎石は肩で呼吸をしながら、ぼんやりとそれを見詰めている。空閑はローターをローションでたっぷり濡らしてから、虎石のアナルにローターをあてがった。
「入れるぞ」
 虎石はヒッと声をあげて体を震わせたが、空閑は構わずにローターを虎石の中へ突っ込んだ。
「あ……! ぁ、ま、やだ、しゅう!」
 ローターは太さも長さもそう大きいわけではない。しかしいくつも付いた突起が、中をぐりぐりと抉るのだ。空閑は虎石のナカを傷付けないように、ゆっくりと少しずつ入れていく。
「ひぐ、ぅう、なにこれ、あたってるぅ……んんっ」
 ローターを全部突っ込まれて、異物感に眉を潜めながらも喘ぐのをやめられない虎石。少しでも動くと刺激を拾ってしまうためか、ひくひくと体を震わせている。それを見た空閑は自分がこれを入れられた時のことを思い出していた。
 そうそう、これ変な形してるから入れてる時は中に変に当たって辛いよな。ま、スイッチ入れてからが本番だけどな。でも、スイッチ入れるその前に。
 空閑はローションでどろどろになった自分の手を見て、追加で濡らす必要はないなと判断する。そして虎石に跨がるように膝立ちになる。
「見てろ、虎石」
「は……?」
 空閑は背中側に手を回すと、自分のアナルに指を伸ばした。
「んっ……んんっ、はぁ、」
 そのままぬちゃぬちゃと、自分のアナルに指を入れて解す。事前に少し慣らしておいたから、人差し指と中指を入れて拡げればこちらもすぐに準備完了だ。しかしそれだけではつまらないので、虎石に見せ付けるようにわざとゆっくり解す。
 指を気持ちいいところに当てる度に熱い吐息が漏れ、ぐちゅぐちゅと出し入れすれば快感がばちばちと脳内で弾ける。だが空閑は、もう指程度では満足できないほどの快感をアナルで得る方法を知ってしまっている。空閑は虎石の視線を釘付けにしたのを確認すると、二本の指でわざと前立腺をぐいと押し込んだ。すると頭が真っ白になるくらいの快感が脳の先まで突き抜ける。
「はぁっ! んぅ、あぁっ……」
 背中を反らしてわざとオーバーに喘いでみせると、虎石がびくりと震えた。一度もイケていないためか、そのペニスは心なしか苦しそうなくらいに思いきり立ち上がっている。それを見て、空閑は首を傾げて尋ねる。
「お前のちんこ、苦しそうだな」
「ぅう……」
「俺の見て、感じたか? ……すぐに、たっぷり搾り取ってやるよ」
 たっぷり自身の中を解し、空閑はアナルから自分の指を引き抜いた。
「……愁、お前、まさか、」
 空閑の狙いに気付いたのか、虎石の声がいっそう震える。
 空閑は虎石に跨り直すと虎石の腰を両脚で挟み込み、その陰茎に触れた。期待でか、ふるりとそれが震える。空閑はそのまま、アナルにそれを押し当てた。
「愁、まっ……!」
 虎石が慌てるが、空閑は腰を沈めてずぷずぷと虎石のそれを飲みこんでいく。ぐりぐりと中を擦る虎石の凶器に、空閑は思わず歓喜の吐息を漏らした。
「はぁっ……随分元気だな、虎石。気持ちいいか?」
「うう……ぁう、愁、もうむり……」
「何言ってるんだ、これからだろ」
「むり、むりだっつのっ、やだ」
 虎石がいやいやと首を振る。上から空閑が乗ったせいで、ローターが強く虎石の中に押し付けられているのだろう。
 空閑はローターのリモコンを片手に取ると、身を屈めて上半身を虎石に密着させる。ちゅ、ちゅ、と唇にキスをしてから間近でその顔を覗き込むと、潤んだグレーの瞳に熱に浮かされた顔の自分の顔が映っていた。空いた方の手で上気した虎石の頬を撫でながら低く、甘く囁く。
「……思う存分、イかせてやるよ」
 そして、一番強い振動になるようにスイッチを合わせてから、かちりと、ローターのスイッチを入れた。途端、ブイイイイイイインと音を立てて、虎石の中に埋め込まれたローターが震え始めた。
「ぁああっ! あ、あああ! やだ、ああっ! むり、なか、ぁああああああああ!」
 小刻みな、しかし強烈な振動が中をぐりぐりと抉り、虎石は目を見開いて全身をがくがく震わせた。虎石の腰が震える度に空閑も突き上げられ、空閑は思わず笑みを深くする。空閑は虎石にさせるがままにするが、虎石が意図せず空閑の前立腺や奥を抉る度に空閑の中は蠢動して虎石のペニスにじっとりとまとわりついてそれがまた虎石への刺激となる。虎石は強制的に前と後ろから強制的に与えられる快感でもう喘ぐことしか出来ない様子だ。
「ふっ……! ん、はぁ、ほら虎石、頑張れ」
 目の前が真っ白になるくらいの快感が脳内で何度も弾ける。空閑は虎石の頭をあやすように撫でながら、快楽に身を任せた。
「むり、ぁ、ゃ、ああ、むりぃ、これだしてぇ!」
 虎石はぐずぐず泣きながら快感から逃げようと身をよじるが、手首をベッドに、腰を空閑に固定されているせいで動くことも叶わない。結果として虎石の腰は止まらず、空閑を何度も突き上げることになり、突き上げられた空閑が虎石を優しく締め付けるので、そこから更に快感が与えられて虎石はまた泣くのだった。
「あ、やだ、んぐっ、ぁあ、あ、ああ!」
「んんんっ! ぁ、はぁっ」
 虎石が一際強く動いたために、虎石のペニスが空閑の一際奥深くを抉り、今日一番の衝撃が全身を走って空閑は思わずぴんと背を反らす。思わずぎゅうっと強く虎石を締め付けてしまい、虎石が「ああっ!」と悲鳴を上げた。
「ふっ、は……いいぞ、虎石……ん、もっと、はぁ、頑張れるだろ?」
「むり、もうむり……ぁ、あ、しゅう、しめんの、やらっ、やめろっ」
 虎石のペニスからだらだらと流れるカウパー液とローション、そして空閑の腸液で結合部はもうどろどろであり、それらが混ざった液体はシーツの上にだらだらと染みを作り、互いが激しく擦れる度に水音を立て、さらに肌と肌がぶつかり合うも混ざりばちゅんばちゅんと卑猥な音になる。
 限界が近いのか、ひくり、と虎石がしゃくりあげていっそう強く身をよじった。
「もう、むり、いっちゃ……いっちまう……」
「んはっ……はぁ、むしろ、ここまでよく頑張ったな、お前……んっ、ぁ、たっぷり、出せよ……」
 アナルで快感を拾う事が出来るとは言え、それでも女役の経験は少ないから虎石はナカイキすることに慣れていない。だから、ローターを入れられてその上空閑に跨がられても、なかなかイケなくて当然だ。むしろ相当辛かっただろう。
 だから、俺がお前に跨がってイクのを助けてやる。お前好きだろ、俺に入れるの。俺もお前に入れられるのが好きだから、こんなことしてるんだ。
 涙と汗でぐちゃぐちゃの虎石の顔にキスを降らしながら、空閑はこれまでほとんど虎石に突き上げられるがままだった自分の腰を動かし始めた。
「あああああっ! しゅ、やめ、うごかすなぁ!」
 増幅される快感にうわ言のように「イク、やだ、イク」と声をあげ続ける虎石の耳元に、空閑は唇を寄せた。
「お前のガソリン、たっぷり俺に注いで来いよ」
「っ……! あ、あああっ! イク、出ちまう……!」
 がくん、と一際強く虎石の体が震え、空閑の中にどろりとした精が注ぎ込まれた。待ち望んでいた熱を腹の中に感じながら、空閑は、はぁ……と艶めいた吐息を溢した。
 しかしだからといってローターを止めるようなことはせず。イッてもなお無理に与えられる快感はもう責め苦でしかないようで、虎石は泣きながら空閑に訴える。
「なんでっ、しゅう、とめ……とめろ、よ、イッた、イッたからぁ」
「ん……イッたからって、止めねえよっ……はっ、んぁ、言ったろ、思う存分イカせてやるって……。ほら、頑張れ」
「ああっ、むり、やだ、きもちいいのやだあっ!」
 しかし言葉とは裏腹に、虎石のはまた固くなり始めていた。
「やら、いっちゃ、イッちまう……ああ!」
「んん、ぁあっ」
 どくり、とまた精が中に注ぎ込まれ、空閑は身を震わせた。腹の中に溜まっていく精液の感触が愛しくて、腹を撫でる。
「はぁ、ん……いっぱい出たな、虎石。偉いぞ」
「えらい……? ひくっ、オレ、えら、い?」
 熱に浮かされたような顔をした虎石はぐずぐずと洟をすすりながら首を傾げた。 しゃくり上げながら体を震わせる虎石を見ていると、胸の奥から愛しさが湧き上がって来る。空閑は「ああ」と笑い、腰を揺らしながらその頭を撫でた。
「俺に……んっ、はぁ、ちゃんと、ガソリン、ぁ、返せて、ちゃんとイケて、ん、偉いな、虎石」
「ぅぐっ、オレ、かえせてる……? しゅうに、んぁ、ゃ、ガソリン、かえせてる?」
「ああ、ちゃんと……ん、返してもらえてる」
「ほん、と、に……? あ、ああっ! また、またイクっ」
 びくんと体を震わせ、虎石はまた絶頂に達した。イキやすくなってしまったのか、空閑の中で虎石はどくんどくんと脈動を続けている。
「しゅう、オレ……う、ううっ、ぁ、あ!」
「っ……!」
 また達した虎石が強く突き上げるので、空閑は思わずぎゅっと目を瞑って耐えた。虎石になんども突き上げられたために脳の隅が甘く痺れ、だんだん自分の意識も曖昧になりつつある。しかしそれは虎石に見せないよう、どうにか呼吸を整える。
「んっ……どうした?」
「ごめっ……ん、ぅう、今まで、あ、ガソリンとか、きょうかしょ、とか」
「……ったく」
 空閑はローターのリモコンを手元に引き寄せると、ぱちりとスイッチを切った。
「ぁ……あ、はあ、はっ……」
 ようやく止んだ後ろからの責め苦に、虎石は肩で息をした。まだ余韻が残っているのか、時折ひくひくと体を震わせる。精根尽き果てたと言った有様のその顔に、空閑はその額に優しくキスをしてから体を起こした。まず虎石の両手の戒めを解いて、その手をそっとベッドの上に横たえてやる。虎石はもう動く元気もないようで、ぼんやりとされるがままだ。空閑が重い腰を浮かして虎石から離れると、とぷりと精液が零れる。
「……もったいねえ」
 虎石が呟き、空閑は「そうだな」と笑う。何度も虎石に注ぎ込まれた腹の中で、動く度に精液がとぷりと音を立てる。重く鈍い痛みを訴えつつある下腹部をどうにか動かし、空閑は虎石の両脚の間に自分の身体を移動させた。大きく広げられた足の間にはローターが咥え込まれ、ローションやらなんやらでぐちゃぐちゃに濡れそぼっているその様子はなんとも卑猥だ。空閑はローターに手を伸ばし、ぐに、と引っ張った。
「ひっ! まっ……や、やめろ、おかしくなるっ!」
 虎石は慌てたように体を起こそうとするが、空閑は聞き入れずに一気に引き抜いた。
「あああああっ! うぐ、ぅう」
 引き抜かれる際にまた強く中を擦られ、虎石はびくんと震えて力なく射精した。空閑はローターをベッドの上に適当に放ると、虎石の横に身を寄せるようにして横になった。
「? 愁……?」
 すぐ間近に、虎石の顔がある。空閑は微笑むと、虎石を抱き寄せた。
「……別に、気にしてねえよ。ガソリンも、教科書も」
「……ほんとに?」
「本当だ。今まで俺がそれくらいで怒ったことあったか?」
「……ない」
「だろ。気を付けろよってだけだ。お前、もうすぐ俺から忘れ物借りられなくなんだからな」
「ん……」
 こくり、と素直に頷く虎石。「頼んだぞ」と、囁いて空閑は虎石の額にキスをする。
「……なあ愁、そういえばさ……」
「ん?」
「お前、イケてないよな? 辛くねえの?」
 疲れきっているためか、虎石は声がやや掠れている上に喋り方は妙にふにゃふにゃしている。しかし空閑は自分が達していないことを思い出して、腹の奥がきゅんと収縮するのを感じた。体全体が熱くなり、先まで虎石を咥え込んでいた部分が疼き始める。
「っ……」
「まだ、溜まってる?」
 空閑の様子を見て、とらいしは少し元気を取り戻したのか、ニヤリと笑った。現金な奴め、と呆れながらも、空閑は
「……お前、疲れてるんだろ……イカせてくれるか?」
「しゅーのためなら、もーちょっと頑張れるかな」
 まだ欲が残っているらしく、その目が光る。もっとも、喋り方はふにゃふにゃしたままだが。それがなんだかおかしくて、空閑は肩を揺らして笑った。
「……それじゃあ、頼む」
 ひとしきり笑ってから空閑がくたりと体の力を抜くと、虎石は膝を突いて上体を起こした。虎石は空閑の片足を高く上げてから、自分のペニスを何度か扱いて空閑のアナルにあてがった。
「入れるぞ、愁」
 くちゅり、くちゅり、と何度か入り口で緩く差し入れした後、にゅるにゅると虎石は空閑の中へと押し入る。
「ん……あ、あああっ、あっ……」
 先までの色々な液体のお陰で奥までスムーズに挿入され、中をもう一度押し開かれる感触に空閑はぞくぞくと体を震わせて歓喜で鳴いた。
「虎石の、あ、入ってる……」
「はは……愁、ほんとオレのちんぽ好きだよな」
 互いに横臥したまま、向き合って繋がる。滅多に取らない体位だが、その分普段あまり当たらないところに当たって、空閑は虎石が少しでも動く度に声を上げてしまう。さっきまでひんひん喘いで泣いていたのに、もうすっかり元気になっている虎石のペニスを、空閑はきゅんと締め付ける。
「んんっ、ばっ、愁、しめんな……!」
「わりぃ……、あっ、あ……!」
 優しく揺さぶられるが、先までイケなかった分が溜まっている空閑はどんな小さな快感でも敏感に拾い上げてしまう。自分の中が蠢いて、虎石にぴったり吸い付くせいでその形を余計にはっきり感じてしまう。
「っあん、とらいし……ふあ、ああ、」
 体中が甘く痺れ、ぱちぱちと視界で光が弾けた。虎石に縋り付くと、ふわりと抱き締められる。
「愁、きもちいい?」
「ん、きもちいい……すげえ、いい……」
「よかった」
「っ……!」
 耳元で囁かれたまだ少し掠れている虎石の声は甘く、空閑の耳にするりと入り込んで意識を溶かしていく。少しずつ上り詰めていくような感覚に、空閑は息を詰める。
「とらいしっ……」
「愁、はぁ……オレも、イキそう……一緒に、ん、イこうな?」
 ぐちゅり、と一際強く突き上げられ、全身を電流のように駆け抜ける快感に空閑は頭のてっぺんから爪先までピンと伸ばして目を見開いた。
「っく、はっ、ああっ! んああああ!」
「くっ……愁……!」
衝撃のような快感に次いで、下腹部から甘い痺れがざわざわと全身を駆け巡る。空閑がぎゅうっと虎石を締め付けると、どくり、と空閑の中で虎石が脈動し、精を注ぎ込んだ。腹の中に注ぎ込まれる熱に空閑は目を細めた。
「あ……とらいし、とらいしの、でてる……はあ……」
「どう、愁……オレのガソリン?」
「ん、すげえ……もう満タンだ……」
「そっか、よかった……」
 虎石がずるりと空閑の中から出ていく。物惜しげに喉を鳴らすと、代わりに唇を重ねられた。互いにどろどろの身体を寄せ合い、何度か重ねる角度を変えながら互いの唇の柔らかい感触をしばらく堪能する。
「はあ……すっげー疲れた……」
 唇を離して、流石にもうげっそりした様子の虎石が呟くので、空閑はとんとんと虎石の額を指で叩いた。
「ったく……これに懲りたら、忘れ物癖をなんとかしろ」
「がんばりまーす」
 そう言ってふにゃりと笑う虎石。その顔に呆れるやら絆されてしまいそうやらで、空閑ははあと溜息を一つ吐いたのだった。
「なあー愁、夜まで母ちゃんも父ちゃんも帰って来ねえし、しばらくこのままでよくねえ……?」
「帰ってくるまでにシーツなんとかしねえとやばいだろ」
「愁が考えなしにヤろうとするからだっつーの~」
「お前もいつも考えなしに発情して来るだろうが……」

 今日は、3月29日。
 2人が3年ぶりに同じクラスで過ごすことになる学生生活が始まるまで、あと少し。

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