please tie me(★)(再録)(和愁)

「愁はさ、なんでオレに抱かれたいって思ったわけ」
 急にそう聞かれ。
「……抱いてる最中に言うことじゃねえだろ」
 そう言ってやると、「それもそっか」と笑いながら虎石は空閑を深く奥まで抉るようにして突き上げた。
「っ……!」
 空閑は頭の中で弾ける光と全身を電流のように駆け巡る快楽による浮遊感から逃れるようにベッドシーツをきつく握った。だが虎石によってシーツを握る指はほどかれ、替わりに虎石の指が絡みつき空閑の掌をシーツに固く縫い止める。もう片方の手首もシーツに押さえつけられ、ベッドに固定されているような形だ。
 自由が効かない体勢にもかかわらず、目の前の男に抱かれながら縛られているような感覚に、空閑はひどい陶酔感を覚えて思わず口角を上げた。それを見た虎石は呆れたように笑う。
「……愁、ほんとこの体勢好きだよな……腰きつくねえの」 
「別に。お前の顔が見えるだろ」
「っ……」
 目の前の虎石の顔が赤くなるのと同時に自分の中の虎石が大きくなるのを感じ、空閑は笑みを深めた。
「ほら、来いよ」
 挑発するように言い終わると同時に、唇は唇で塞がれた。何度も角度を変えながら重なる互いの唇の柔らかさをたっぷり味わいながら、舌先を擦り合わせる内に混ざり合う唾液を空閑は必死で飲み込んだ。
 ぐちゅぐちゅと音を立てながら何度も抽送し、浅いところから奥まで、虎石は空閑の感じるところを自身で押し潰すようにしてひたすらに、けれど優しく蹂躙する。
 空閑は自身が奥まで暴かれる度に甘い声を漏らす。
「はぁっ……! ぁ、んぅっ、ふっ……」
「はっ……愁の中、すげえ気持ちい……」
 虎石によってベッドに繋ぎ止められている安心感で、空閑は躊躇無く快楽に身を委ねることが出来た。もっと深く繋がりたいと腰に脚を絡めると、虎石は呆れたように笑う。
「愁、ほんっとオレのヤんの好きだよな……」
「んっ……はあ、お前だから、な」
「はっ……」
 ぼっ、とまた虎石の顔が赤くなり、腰が止まる。
 女となら散々遊んで来ただろうに、俺相手だとこの反応。空閑は愉悦を覚えながら目を細め、それを見た虎石は恥ずかしそうに目を反らす。
「ほら、動け」
 強請るように空閑が腰を動かすと、虎石は「ああーっくそっ!」と呻きながら勢いよく空閑に腰を叩き付けた。
「んぁっ、あっ!」
 突如与えられた脳の許容を軽く越えるほどの快楽に目が眩み、空閑は全身を震わせた。虎石は空閑の最奥まで何度も抉って責め立てる。快楽の海で溺れそうで、上手く息が出来ない。
「愁……愁、愁っ」
「はっ……あ、ぁあっ」
 何度も名前を呼ばれながら奥まで暴かれ、上手く酸素が行き渡らないまま快楽だけを与えられる脳にその情欲で濡れた声は容易く染み込んでいく。自分の喉から漏れるのは意味を持たない喘ぎ声だけだ。
 虎石はその喘ぎ声すら逃すまいとまた唇を重ねてくる。呼吸は苦しくなるばかりなのに、唇に感じる柔らかい感触に縋っていると、何故かいつもより深く呼吸出来るような気がする。
 体の内側を波のようにせり上がってくる感覚に、空閑は無意識に笑みを深めた。そして、声無き声で呟く。
 
 ──お前に縛られてなきゃ、こんなに気持ち良くならねえよ。

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