「シャリア・ブル大尉、君は私の仮面の下に興味はないのか?」
ソドン内部、シャアの個室。ソファに足を組んで腰掛けたシャアが、ワインを傾けながら言った。
シャアに招かれて向かいに座っていたシャリア・ブルは口を開く。
「私を慰み者にしようと?」
こう返したところでこの方は怒りやしないだろうと思っての返事であったが、やはりシャアは小さく肩を揺らして笑った。
「そのようなつもりはないのだが」
「……お戯れを」
「戯れではないさ、私は君に隠し事をするつもりはない」
戯れではないことを隠しもしないから問題なのだ、とシャリアは思う。
シャリアの胸中を読まずにか、それとも無視してか。シャアは立ち上がると、シャリアに歩み寄る。シャリアが立ち上がろうとするのを肩に手を置いて制し、背を屈めると耳元で囁いた。
「私は思いの外、君に対して本気になっているようなのだ」
一番の問題は、言葉上では制止しながらもこうして迫られれば喜んでしまう自分だろう……シャリアがそう理解した時、シャアが笑ったことが顔を見なくても分かった。
12 2025.2