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最初に抱きかかえた時、両腕にかかる確かな重みと温度に一瞬思考が止まった。新生児の平均体重は知識として知っていても、腕の中で眠るその赤子は思っていたより重く、同時に思っていたより軽かった。自分のたった二本の腕にこの子の命が乗っていて、そしてそれは自分がこの子を抱きかかえられなくなったとしても続いていくのだ──そう実感した途端に、蓋をしていたものが溢れ出るように目頭が熱を帯び、思わず腕の中の赤子に顔を寄せる。大切なものを守れないでばかりいる惨めな人生。それでも今度こそ、妻と我が子だけは。どうかこの子に、喜び溢れる生を。願いを込め、そっと名前を呼んだ。「……雨竜」