音もなくほどけた緑髪が彼の背中に流れて項を隠すのを見て、はっと夢から醒めたような心地になる。
彼の向こうに見えていた彼の人の面影はいつの間にか潜められ、羊飼いの英霊がこちらを見て少しだけ困ったように笑っていた。
「そんなにじろじろ見て、どうかしたのかいマスター?」
「……ごめん。何でも」
髪結んでたなんて珍しいね、とか、言える事はある筈なのに、その言葉が言えない。だって、自分が今見ていたのは彼ではなく。
もう一度、羊飼いの方を見る。
彼の人の面影はもう見えなかったけれど、その瞳に煌めく新緑は、彼の人と同じ色をしていた。
18 2018.8