モバの2018年ハロウィンイベントが元ネタの吸血鬼パロです。
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「ねーねーヒデオくん。カノンね、仲間にしたい男の子が出来たの」
「そうか。ちゃんと合意は取れよ」
「でもその子ね、まだ子供なの」
どこか悲しげなカノンの声に、ヒデオは読んでいた本から、膝の上にもたれるカノンに視線を向けた。
「子どもを吸血鬼にしてはならない」とされる吸血鬼の掟を破り、十に満たない年齢で吸血鬼となった少年は、はあ……と溜息を一つ。
「でも、ダメだよね」
「なんかあったのか?」
「うん……カノン、カワイイお姉ちゃんやカワイイお兄ちゃんの血を吸わせてもらうのも好きだけど、たまに思うの。カノンと同じくらいの子を仲間にできないかなあって」
「……そうか」
カノンを吸血鬼にした吸血鬼は、掟を破った事で処刑された。カノンはわけも分からぬまま吸血鬼となり、その処刑の事も知らずに吸血鬼達の治安を担うヒデオ達の下へ引き取られた。それがおよそ五十年前の話。
今のカノンは恐らく薄々察している。自分を吸血鬼にした吸血鬼がどうなったのか。
「ねえヒデオくん、ヒデオくんは同じくらいに見える仲間を増やしたくならないの?」
「……俺は、自分と同じくらいの歳に見えるかどうかなんて気にしたこと無かったしな。仲間は皆よくしてくれたし……」
だがカノンは幼い子供の外見をしている。幼いまま吸血鬼になり、精神的にも殆どそこで止まってしまっている。ヒデオ達のような「同族」という意味ではなく、「歳の近い友達」としての仲間が欲しくなるのは当然と言えた。
だがそれは吸血鬼の掟に触れる。
そして、幼い子供を幼いままに吸血鬼にする行為は、まさしく今のかのんのような危うさを孕んでいるからこそ禁止されていた。己の力の行使を我慢出来なくなり、やがて理性を失ってしまう恐れがあるのだ。
ヒデオは、眉を下げて唇をきゅっと結んだカノンの頭を撫でる。
「……カノン、お前は一人じゃない。俺達がいる」
「ヒデオくん達のことはもちろんだいすきだもん。でも……」
「そうか。でもな、」
それでも、お前は我慢しなきゃいけないんだ。そう言いかけ、ヒデオは口を噤んだ。
本来被害者である彼に今それを言うのはあまりに酷に思えたのだ。代わりになにか言える事は、と思考を巡らせて再度口を開く。
「……なあカノン、だったら今度、旅をしてみないか」
「旅?」
「ああ。この世界には、俺達吸血鬼の他にも悪魔や蜘蛛男蜘蛛女、魔女がいるって話だ。もしかしたらその中に、お前と友達になれるやつだっているかもしれないぞ?勿論、俺も一緒だし……ミチルやショウマさんやスザクも誘おう。みんなで世界を旅して回ろう」
「友達……」
カノンの目がキラキラと輝き出す。
「行きたい!ねえいつ行く?!」
「すぐには無理だからな、まず皆に話してからだ」
今すぐにでも飛び出して行きそうなカノンを制止しながら、ヒデオは使い魔の蝙蝠を呼び出し、羊皮紙と羽根ペンを持ってこさせる。
「カノン、どっか行ってみたいとこはあるか?」
「んーとね、温かくて……夜の海が綺麗なところ!」
「オーケー」
ヒデオは仲間達宛の手紙に筆を走らせ始めた。
『招待状・カノンの友達探しの旅──』
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この後諸国漫遊の旅に出たカノンは南の国でアラクネのサキやデビル・ルイと仲良くなります。多分。