長年を掛けて集めたコレクションの多くは、あのちょっぴり忌々しい兄弟の起こした事件によって朽ちてしまった。私の元には一番の宝物が残されていると言えど、私の所持していた品々は最早手元には残っていない。
では、ふむ。私の美術品蒐集家という肩書きは、名乗るにあたって相応しい物なのだろうか? なんとなくその疑問を私の宝物に投げ掛けてみたところ、こう返ってきた。
──オーナー自身がそう有りたいと望むのであれバ。
──例えコレクションがそこに無くとも、オーナーは美術品蒐集家なのでショウ。
私がそう望めば、ね。まあ、そういうことにしておこう。
それじゃあ私が美術品蒐集家と名乗るのを続けたとして、そう名乗る意味は、どこにあるのだろう。そんなことを思った時に見るのは、私の部屋にいつも飾っているあの絵だ。
私とお手伝いロボットが描かれた肖像画。写真に写ることが出来ない私にとって、私の姿を映す唯一の物。あの事件の後で私の手元に加わった、僅かなコレクションの一つ。この絵を置いて、あの画家はどこかへ消えてしまった。あいつもまた私の手元から消えたコレクションの一つなわけだけれど、消える置土産に新しいコレクションを残していったのだから、律儀と言うか何と言うか。
お前は私を憎んでいたようだったけど、そのお前が描いた絵が私の新しいコレクションの最初の一点になるというんだから、皮肉な話じゃないか。
思わず溜息をつくと、喉の奥から勝手に言葉が溢れた。
「お前も、消えなければ良かったのにね」
……なんて、ね。