3_うっすらと怖い話スレ 315

うっすらと怖い話スレ 315
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46:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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もう50年近く前の話になるんだけど、どうしても忘れられない出来事があるのでここに書き込むことにした。
私はアメリカの東の方の生まれなんだが、親の仕事の都合で12を過ぎた頃に日本に引っ越して来た。今は日本人の女性と結婚して、日本人として生活している。
つまり小学生まではアメリカで過ごしていたんだけど、2年生だか3年生だったかの頃の同級生に奇妙な失踪をした子がいてね。
クラスメイトの男の子(ここでは仮にA君とする)だったんだが、子役としてドラマに出たり広告のモデルなんかをやっていてね。プラチナブロンドの髪に綺麗な青い目をしていて、それはとても目立つ子だった。私はA君と特別仲が良い訳ではなかったんだけれど、A君はクラスの誰にでも分け隔てなく接するような子だったし性格も良かったから、学校に来るのは週に2、3回程度だったにも関わらず誰からも人気があった。私も含めて、クラスに彼を嫌いな生徒はいなかったと思うよ。
A君の父親は大手の証券会社に勤めていて、母親は人気の舞台女優だった。ここまで書けば何となく察するかと思うけど、A君の家は所謂お金持ちだった。私は遊びに行ったことはないんだけど大きなお屋敷に住んでいて、学校に来る時は自家用車でお抱え運転手が送り迎えするような、そういう家だった。

47:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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ある時、A君一家が引っ越す事になった。学区は変わらないから転校を伴う訳ではなくて、でも住所が変わるので当然私達クラスメイトは引っ越しの事実を知ることになる。当時はアメリカでも今ほど個人情報保護がしっかりしていたわけではないから、A君の新しい家の住所は普通に紙に印刷されてクラス全員に配布された。私は住所を見ただけではそれが具体的にどんな場所なのかなんて分からなかったけどね。
でも私の父がA君一家の引越し先の住所を見た時、少し表情が険しくなったのを覚えている。
「有名人の一家があんな場所に引っ越すなんて……」
父はそう言っていた。
当時の父は出版社で雑誌の編集者をやっていたんだが、どうもA君一家の引越し先の住所が取材で行ったことのある場所だったらしい。あんな場所、という言葉の意味が気になったので父に尋ねると、父は少し迷ってから教えてくれた。誰にも言うんじゃないぞ、という念押し付きで。もう時効だからここに書くけど。
どうやらA君一家の引越し先は、都会のど真ん中にも関わらずどこか薄暗くて気味の悪い建物が立ち並んでいるエリアらしい。父はホラーとか怪奇現象を扱った雑誌の担当をやっていて、記者の取材に同行する事も度々あったから幸か不幸か「そういう場所」は何となく分かるようになってしまったらしい。
A君一家の引越し先に当たるその地域は父の勤め先からもそう遠くない……というか徒歩20分とかで行ける近さなせいで、やたらはっきり覚えていたんだそうだ。
その地域では昔一家惨殺事件が起きて霊が出るマンションがあるだとか、夜な夜なポルターガイスト現象が起きるだとか、深夜墓地をうろつく霊がいるだとか、とにかくそういう心霊現象の噂に事欠かないらしい。学区内にそんな場所があるなんて私も初耳だったけど。
何事もないといいんだがな、と父は心配していたし、私もA君一家の事が心配になった。

48:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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引っ越しから数日、A君は学校に来なかった。
元から学校に来る日の方が少ないくらいの子だったから、そのことを気にしている生徒は特にいないように見えたし、心配していたのは私くらいだっただろう。私がそれを表に出せることはなかったけど。理由を他の子には言えないわけだしね。引っ越しの前後は忙しくなるものだってことくらい、皆も分かっているし。
A君が引っ越してから最初に学校に来たのは、昼休みが明けた後の授業中だった。A君はいつもと変わらない笑顔で皆に挨拶していたのだが、どこか顔色が悪いように見えた。
翌日、A君は学校に来なかった。
そのまた翌日、A君は朝から学校に来た。今度は目に見えて顔色が悪かった。珍しく体育も見学したので、クラスメイト達が一様に心配していた。だがA君は「なんでもないよ」と言うだけだった。

49:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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ここで少しだけ話が逸れるんだけど、A君にはB君という親友がいた。
A君は誰にでも優しかったが、B君は小学校に上がる前からの友達で、一際仲が良かった。
A君の調子が悪いのはB君も気付いていたようだ。
A君が引っ越してから最初に登校して4日目、つまりA君が体育を見学した次の日、A君は仕事か何かで学校には来なかったのだが、B君はそれも少し疑っているようだった。
「Aは明らかに具合が悪そうだった。引越先で何かあったのではないか」
そんな旨のことを、その日のB君は言っていた。この時僕は、B君にA君の引越し先のことを話すべきか迷ったけど、結局直接は言えなかった。
何故ならB君は僕が彼に何か言う前にその日の放課後、直接A君の新しい家を訪ねに行ったからだ。

50:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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あんま関係ないこと聞いてすまん

49 はBと仲良かったの?

51:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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50
 理科の授業で実験の班が一緒だったから、時々話してたくらいかな。仲が悪いわけではないけど特別仲良しでもない、普通のクラスメイトだったよ。B君の話を聞いたのも実験の授業の時だったかな。

話を戻そう。
その翌日、つまり5日目。
A君は学校を休んで、B君は登校した。
そこでB君から聞いたんだが、B君は母親の運転する車でA君の家の住所を訪ねたそうだ。
だけどおかしなことに、「近くまで行く」ことは間違いなく出来ているのに、地図と住所を見ながら何度近くを車で走っても、家屋なんてどこにもなかったんだそうだ。
B君は車から降りて直接確かめたかったらしいのだが、B君母がそれを許してくれなかったらしい。私の父が言っていたその地域の雰囲気の悪さが関係しているのかもしれない。
結局B君はA君やその家族に会うことも出来ずに家に帰ったそうだ。

そして6日目。
A君が登校して来た。
だがその雰囲気は明らかに異様だった。
不健康そうな顔色にぎょろりとした目、何かに怯えるように忙しなくきょろきょろと視線を動かす仕草。
そして最も異様なのは、その服だった。
ショッキングピンクの柄物の大判のシャツに赤いベスト、真っ青なジーンズ……当時はそんな言葉も概念もなかったと思うけど、今なら分かるよ。典型的なヒッピーの服だったんだ。
確かに当時からサイケデリックファッションは流行っていたけど、小学生の内からそんな服を着ているような子は私の記憶の限りではいなかった、少なくとも私の通っていた学校では。
ましてはA君はいつも高そうな服を行儀よく着こなしているような子だったから、クラスは勿論騒然となった。
結局A君は授業が始まる前に、気持ち悪いと言って保健室に行ってしまった。
休み時間はB君が様子を見に行っていたらしいが、昼休みになる前にはA君は早退してしまった。
そして次の日から、A君が学校に来ることはなかった。
A君の両親共々A君が失踪したと先生から聞かされたのは、それから3日後のことだった。

55:本当にあった怖い名無し:2009/2/7(土)
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A君母は有名人だったし、当時は新聞記事にもなって大きな騒ぎになった。
でもいくら警察が探しても手がかりは見付からない。
一家揃って、忽然と姿を消してしまったんだ。
勿論警察はA君一家の住所も探したらしい、だけどその住所には空き地があるだけだって新聞記事に載っていた。
A君が失踪してから半年近く、私のクラスはひどく暗い空気になったことをよく覚えている。
だけど一番よく覚えているのは、A君が失踪したことを聞かされてから少しした頃にB君から聞いた、保健室のベッドで寝ている時にA君がうなされるように言っていたという言葉だ。

「あのマンションには悪魔が住んでいる」。

私はB君ほどA君と仲が良かったわけではないし、B君とも私が日本に渡ってから一度も連絡を取ったことはない。だから以上が私の知っている全てになる。
ただ、心霊現象の噂が絶えない地域に引っ越したクラスの人気者が異様な雰囲気を纏うようになってから一家揃って失踪したっていうのは、やっぱり子供心にトラウマに近い形で記憶に残っている。
だから今でもああいうサイケデリックファッションは苦手だ。

で、なんで急にこんな話を書き込むことにしたかって言うと、最近やけに派手な色の服装をした人を見かけるようになったからだ。
おまけに、やけに古めかしいというか最近日本ではなかなか見ないような……洋風趣味と言っていいのかな、奇妙な外観のマンションが私の家からそう遠くない場所にいつの間にか建っていてね。
それで、ふとA君のことを思い出したというわけだ。
しかしあのマンションは何なんだろう、工事なんてしていた気配なかったんだけどなあ。

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