【ちあふゆ】メランコリーキッチン

 少しは強引になってみろ。
 週に一度家に来ては作り置きのおかずを作ってそして帰って行く、ただそれだけの幼馴染のキッチンに立つ背中を睨みながら、冬沢は苛立ちを小さな溜息に替えて吐き出した。
 千秋貴史という面倒な男が己に向けているそれがただの世話焼きだけでないことくらい、とっくに知っていた。だから週に一度家に上がることを許した。そして、いつアクションを起こすかと静観していた。
 しかし半年間何も「無い」となると、流石にこう言ってやりたくもなる、馬鹿じゃないのかと。
 図々しさ無神経さにかけては天下一品だというのに何故こんな時に限って何もしてこないのか。
 そんなにやきもきしてるくらいならお前から動いてみればいいだろ、と能天気な顔の某友人に以前言われてしまった時はそんなに簡単な問題では無い、と返答したものの、今に至ってはそれは確かに名案なのかもしれなかった。しかしどうするのが良いのやら。
 千秋に対する有効打なら思いつかないことも無い。何をすればその心を揺さぶってやれるかはそれなりに分かる。だが冬沢にもプライドというものがある。良識だってある。
 だからいつも、思考は一周する。
 あいつから動いてくれればいいものを、と。

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