「……痛み止め効いてるか?」
早朝。
昨日から食事時以外は孔明先生の所に入り浸りの道明寺とアルヴィスの廊下で顔を合わせたかと思えば、いきなりこんなことを聞かれた。
そして俺はと言えば、この男相手に隠し立ては意味が無い事をよく知っているものだから、こう返した。
「この環境じゃ効くものも効かないから飲んでない」
「お〜そっか。あんま無理すんなよ〜」
ひらひらと手を振りながら、道明寺は俺が歩いて来た方へと歩き去って行ってしまった。お前のその観察眼と遠慮の無さには驚かされてばかりだよ、と思わず溜息を一つ。滅多に主張しない義手の付け根がずきずきと痛む。
ボレアリオスのミールに攻撃を受けている竜宮島の不安定な環境は、島民だけでなく俺の右腕にも負担となっていた。
その日の夕方、諸事情あって泥だらけになって戻って来た俺をアルヴィスへの入口で出迎えたのは道明寺だった。
なんでここに、と言いかけた俺に、道明寺は「ほれ」と、左肩に小さな紙袋を押し付けてきた。
「そろそろ飲んどけ。お前の痩せ我慢もバレる頃だぞ」
紙袋を受け取って中を見ると、痛み止めの錠剤だった。
「道明寺、お前……」
「少なくとも宗美さんにはとっくにバレてるからな〜」
「えっ」
「ほんとよくやるぜ、JUDA製の義手とナノマシンがあってもなお痛いくせに立上がフェストゥムの墓作るの手伝ってたんだろ」
「それは……放っとけないだろ」
俺は一度死んでいる。墓に手を合わせてくれる人がいるコトが、忘れられていないコトがどんなに嬉しいか、知ってしまっている。だから立上を手伝った。
まあ、地面に穴を掘って墓標の石を立てて土を被せて……という一連の作業は確かに腕に負担だったが。義手の付け根痛かったし。でも俺はこれで満足なのだ。
道明寺はそんな俺を見て呆れたように笑いながら大仰に肩を竦めた。
「お前の自由だけどさ、無理すんなよ」
いかにも余裕げにこう言うが。
戦闘の合間に寝る間も惜しんで異なる世界の歴史を勉強してるこいつにだけは言われたくはない。だけど言ってやめるような奴でもない。
だから俺は、溜息混じりにこう返すのだった。
「……お前もな」
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UXの矢島と道明寺すごい良かったです。