とある神父との邂逅
「激辛チュロスを一つ」
これでもかと激辛メニューが並んだフードコートに、見知らぬ来訪者が一人。
カソックを着たその男は日本人に見えるが、どこか只者ではない空気を纏っている。
恐らくサーヴァントなのだろうが、カルデアでも《秋葉原》でも見たことがない。そもそも、日本人で神父の英霊……? フードコートの受付に立っていたエリセは不思議がりつつ、激辛チュロスを用意する。
会計を済ませて去り際に、チュロスを持って神父は目を細めながら薄く笑った。
「励むがよい、少女よ」
「は、はい!」
エリセは思わず背筋を伸ばす。
この人がどこから来た誰なのかは分からないが、心の芯から人を鼓舞する力のある言葉だった。王や戦の将が持つカリスマとはまた違う、強い信仰心を持つ指導者の英霊が持つ空気感とでも言うべきか。
神父は激辛チュロスを手にどこかへと去って行く……と思ったら、チュロスを一口齧ってから早足で戻ってきた。
「美味い」
そう一言だけ言い残し、また素早くどこへともなく去って行く。
不思議な人だ……とエリセは首を傾げる。
今後会う機会があったらお礼を言いたいな、などと思いながら。