名古屋に出張に行っていた父が、朝の新幹線で帰っては来たがその後またすぐに仕事で直接土産を渡せないのですぐ家に来て冷蔵庫の中の箱ごと持って行け、などと正午を回った頃に連絡してきた。
なので雨竜が、その唐突さに呆れつつも実家に足を運んだところ。
可愛らしくデフォルメされた鳥の形をした……薄黄色のケーキ? が、四つ。冷蔵庫の中に置かれていた箱の中に鎮座していた。
「……なんだ、これ」
父のセレクトに対するイメージからあまりにかけ離れたそれに、思わず声が出る。
白い箱に貼られていた黄色いシールには、そのケーキのイラストと共にこう書かれていた。
『ぴよりん』と。
「…………」
ますますあの父っぽくない。
父が名古屋土産で買ってきそうなお土産って、良くてキオスクの一番目立つところに置かれていたういろうとかじゃないのか。何故これを選んだのか。
手元の携帯端末で調べてみたところ、どうやらこのぴよりんは名古屋駅構内の店舗でしか販売されていない新たな名古屋名物のひよこ型プリン、ということらしい。
箱に貼られているシールを見ると、消費期限は今日になっている。
箱ごと持って行け、と父は言っていた。つまりこの四つ全て好きにしろということなのだろう。
「……全く……」
友達と食べなさいの一言くらい言えないのか、あいつは。
雨竜は改めて父に呆れつつ、同時に気恥ずかしさも覚えながら、通信アプリのとあるグループチャットを開いたのだった。
ぴよりん、持ち運ぶ難易度やばいらしいですね。
(イートインでしか食べたことない)
続いた→続・竜弦が雨竜に名古屋土産でぴよりん買ってきた話