プロフェッショナル──文明監視の流儀(マックスとゼノン)

 文明監視員の朝は早い。

「おはようございます」
 M78星雲・光の国、文明監視本部。
 早朝にその門をくぐる、一人の男。
 ウルトラマンマックス……光の国が誇る、エリート文明監視員である。

 ──朝はいつもこれくらい早いんですか?
「いえ、こんなに早いのは出張に出る時くらいですよ。私も年次が上になってしまったものですから最近は若手に任せる事も多いんですが、まだ現場には出ていたいもので」
 ──出張とは?
「星に生まれた文明がどのような発展を遂げるのか、監視しに行く……我々の本業です。時には宇宙警備隊や宇宙科学技術局、はたまた他の惑星からの要請を受けて、宇宙全体に悪影響を及ぼしかねない文明を監視することもあります」
 ──監視するだけ、なのでしょうか。
「はい、基本的にはその星の文明には干渉しません。どのような発展をしようとも」

 マックスは出勤すると必ず、モーニングルーティンの一環としてフリースペースでコーヒーを一杯飲む。砂糖やミルクは入れず、ブラックである。
 そしてコーヒーと共に、既に頭に入れてある出張先の情報を何度も再確認する。
「地表の九割が水で覆われ、水中に住む種族が地上に住む種族を支配……根源的破滅招来体に由来する技術を所持……」
 そこに現れたのは、マックスと同じく文明監視員のウルトラマンである。
「おはようマックス、出張の時は相変わらず早いな」
「おはよう、ゼノン」
 ウルトラマンゼノンである。
「……ああ、お前の取材は今日だったか」
「そうだよ」

 ──ゼノンは、文明監視員としてどのようなお仕事を?
「マックスとそう変わりませんよ。ただ私は肩書き上では彼の上司に当たるので、基本的に光の国に常駐しています。時々現場に出ている監視員のフォローに向かうこともありますが」
「私も昔は助けられました」
「ははは。早く返せよマックスギャラクシー」
 ──上司と部下にしては、親しいご様子ですが
「歳が近いですし、年次もそう変わらないので。こいつが現場にいたがるものですから、仕方なく私が上司役になりました」
「本当に、ゼノンには助けられてばかりですよ」
「助けに行った先でゼットンに殺されかけた事もありますけどね」
 ──文明監視員であっても、怪獣との戦いは避けられないのでしょうか
「ケースバイケースです」
「おいマックス、ちゃんとクルーさんの方を見て喋れ。まあ、現場に出た先でウルトラマンを狙う通り魔的な奴に襲われることもありますよ……こいつの話ですが」
「平和な星を観測していたら通り魔に襲われて鏡に閉じ込められました。後輩のお陰で助かりましたが……」
 ──後輩というのは、文明監視員の?
「ああいえ。もっと広く、他の宇宙で活躍しているウルトラマンの後輩ですよ」
「こいつ、なまじ強いせいで文明監視員なのによく前線に出て行くんですよ……宇宙警備隊から引き抜かれかけたこともあるくらいで」
 ──それだけ強いのに、何故文明監視員に?
「簡単な話です。私はただ、この仕事が好きなんですよ」
「大した物好きですが、我々は何かと助かってますよ」

 そう語るマックスの横顔は、プロフェッショナルとしての誇りに満ちていた。そしてそれを見るゼノンもまた。
「さてマックス、そろそろミーティングの時間じゃないのか」
「そうだな」
 マックスは、出発前のミーティングに出席した。
 そこでは文明監視員達によって、監視先の文明の概要や環境、滞在期間の最後の確認が行われる。
「星の表面を覆う水についてですが、成分サンプルを解析したところ有毒性は無いため潜行は可能なものと思われます」
「重力・気圧についても活動可能な数値ですが大気の層が厚く、長時間地表付近に留まるのは難しいかと」
「滞在期間は予定通り、光の国基準三ヶ月で問題ないか?」
「問題ない」
 最後まで、全員が真剣な眼差しでミーティングを行っている。
 文明監視員は、怪獣や星人達から狙われる事も少なくない。命の危険と隣り合わせだが、命の危険を事前に回避出来るよう、現場に出る者に対するバックアップは万全に行われる。無論、現場に出る者も万全の準備を行った上で出発する。

 ──貴方にとって、文明監視員とは?
「……遺し、語るための仕事、ですかね。文明はいずれ滅びるかもしれません。星にも寿命はあります。避けられない滅びも、時にはあります。それでも、彼らがそこにいたのだということを、私は覚えていたい。そして後世に伝えたい。文明とは、彼らが確かにそこにいた証なのですから」
 ──そこにいた証、ですか。
「はい。少しでも彼らがそこにいたことを後世に伝えられたら、彼らがそこにいた事実は消えることはなく、彼らの存在が次の世代に繋がれていく……そう、思っています。勿論、滅びないに越したことはないですがね」

 マックスはゼノンに見送られ、異次元宇宙に繋がるゲートより光の国を出発した。
 その背中はどこまでも、プロフェッショナルとしての誇りに溢れていた。
 マックスを見送ったゼノンはこう語る。
「あいつは過去に一度、監視対象の惑星の原住民に干渉してしまったことがあります。ですがそれは、彼がどこまでも愛情を持って文明を見ていることの証明だと私は思っています。まああの時は若かったですし、私もその件で相当苦労させられましたが……」
 どこか遠い目をして苦笑しながらも、ゼノンはこう締め括った。
「すべての文明に愛を持って接しているから、いつか滅びるのだとしても彼らが忘れられること無いよう記録に留めておきたい……それがあいつの、プロフェッショナルとしての在り方なんですよ」

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これ書いたのギャラファイ2の前だったから「マックスはゼノンもしくは職場からマックスギャラクシーをずっと借りパクしている」って思ってたんですけどそんなことなかったですね。