同じ月見て(我夢と藤宮)

※オーブオリジンサーガ付近くらい

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
 
「むぐ……もしもし、高山です」
『ああ、我夢。俺だ。……お前、何か食べてるな?』
「月見食べてる」
『ああそうか……』
「藤宮は食べた? 今年も月見美味しいよ、今日は満月も綺麗だし」
『……そうか、偶然だな。俺も今さっき買ってきたところだ』
「え、それじゃ食べながら話そうよ」
『どうしてそうなる?』
「僕だけ食べてるのも悪いし。藤宮どこからかけて来てるの?」
『……自宅だが』
「じゃあ丁度いいよ、藤宮も食べよう」
『……はあーっ……(ガサガサ)(むしゃ)』
「だいたいなんでご飯買ってきたばっかりなのに僕に電話掛けて来たのさ」
『ん……外でするわけにはいかない話だ。手伝って欲しいことが出来た』
「高山我夢に、それともウルトラマンガイアに?」
『両方だ』
「オッケー。どんな用事?」
『以前から三陸沖に住んでいる怪獣が繁殖期に入る兆候を見せた。大人しい性格なんだが、繁殖期にはやや凶暴化する。そこで繁殖期の間だけ、港から少し遠い海まで運んでやりたい』
「それだったらアグル一人の方がいいんじゃない?」
『ああ、だが万が一ということもある。……それに、せめて出産が終わるまでは近くで見守っていたいんだが、それだと俺一人では限界がある。お前には怪獣のバイタル観察といざという時のなだめ役を手伝って欲しい』
「いいよ、じゃあ船とか借りなきゃ」
『ああ、その辺りの手配は俺がする。お前は週末に釜石の港まで来い、連絡してくれれば適当に拾う』
「了解。あーあ、しばらく休講かー。また大学に怒られるよ」
『それは悪いな……いや、お前この前今の時期は担当の講義が無いとか言ってなかったか?』
「ばれたか、もぐ」
『からかい方が雑だ』
「いつも藤宮があんまり気軽に僕を呼び出すからちょっとくらい自責の念を持ってもらった方がいいかなって思って。忘れてない? 僕大学教授なんだからね?」
『分かった、今回の件が終わったら何か奢る、それでいいか』
「いいよー、釜石って言ったらラーメンと海鮮だよね、楽しみだなあ」
『お前、食事中によく別の食べ物のこと考えられるな……』
「もちろん、月見も美味しいけどね。藤宮も好きなんだろ、月見」
『……まあ、嫌いではないな』
「満月の夜に食べる月見、いいよねえ。秋の風物時って感じで」
『ハンバーガーだけどな』
「秋にしか食べられないなら、それは立派な秋の風物詩だよ。こうやって同じ物を食べて、同じ月を見て、同じ秋を感じる事が出来る……風物詩ってそういうものだろ?」
『全く……いつから文系になった? あるいは酒でも飲んでるのか?』
「まさか。でも月があんまり綺麗だからそれには酔っちゃったかも」
『そうか。では今何徹目だ?』
「……二徹目かな」
『それ食べ終わったら歯磨いてさっさと寝ろ‼』

ウルトラ作品一覧へ戻る
小説作品一覧へ戻る