Xの声がしない食卓は、少し寂しい。
Xが話し掛けてこないデスクワークも、少し寂しい。
いたらいたで鬱陶しいと感じることもあるくらいなのに、いなかったらいなかったで寂しいなんて勝手な話だ。
Xがいないことの方が多いのに……あ、いや、訂正。そうでもない。記憶を頼りに数えたら月の半分は一緒にいる。
いや待て、先月はほぼ毎日Xがいたような……それでちょっと宇宙まで行って怪獣と戦ってきて、その後地球に戻ってもなんだかんだでずっとXがいたような……。
その前の月はどうだっけ? 月末の学会で出張先のホテルで起こしてもらってた事は覚えてる。他には……ああそうそう、ゴルザと戦った。
その更に前の月は前半ずっとXが来てて……。
……もしかしなくても俺、分離してる割に結構長時間Xと一緒にいるな⁉
……なんて、気付いたのは二年くらい前だったなあ。そんなことをふと思って、月を見ながらパンを齧った。
タイガの地球に来てから、ふた月。
最近の俺の担当は、高度700kmを漂うグリムド封印体の観測だ。ハンドメイドの限られた機材しかないけど、グリムドの放つ周波数は把握してるから観測はそんなに大変じゃない。
変身能力と引替えにグリムドを封じている間の俺は当然、Xと話をすることが出来ない。だからXが心配ではあるけど。まあXなら大丈夫だろうな、と思っている。Xはそんなにヤワじゃない、俺が一番よく知ってる。
だけど胸の内には隙間風が絶え間なく吹いてるような感覚があった。ニュージェネレーションの仲間達と話していても消えないそれが、Xが目の前にいないから感じるものなんだと気付くのにそう時間は掛からなかった。
この感覚が、寂しいってことなんだろうな。それも少しなんてものじゃなくて。凄く、凄く、寂しい。
Xのお陰で長らく忘れていたそれは思いの外堪えるから、俺は今日も空を見詰め続けるのだった。
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個人の見解ですが、Xは分離してはいるけどその後客演の度に大地離れしてない事が発覚しているので本当に分離してるの?みたいな頻度で大地のところに遊びに来てると思います。
映画でXの力が戻ってきた時のエクスデバイザーを見る大地さんの本当に嬉しそうな顔がめちゃめちゃ好きです。
設定的にX個人の人格はいくらでも出せるはずなのに2023年になっても客演やイベントステージの度に基本的な人格が大地だからもう「Xは大地離れしてない」以上の結論が出せない。
Xのそういうところが好きです。