COSMOS(ジャスティス(ジュリ)とアヤノ)

※ジャスティスが遊星ジュランにたまに来ている設定

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 その星に降り立って人間の姿を取った時、最初に目に入ったのはゆるやかな坂の斜面一面に広がる花畑であった。桃、白、橙、赤、黄……色とりどりの花が、咲き乱れている。よく見れば全て似た形をした花で、これが人の手によるものであることは明白だった。
 私がその花畑に見入っていると、私を呼ぶ声がした。
「ジュリさーん!」
 春野アヤノ……この星の管理責任者でありウルトラマンコスモスと一つになった人間・春野ムサシの妻だ。ムサシと揃いの青い服の上からエプロンを着たアヤノは、手を振りながら駆けてくる。
「お久しぶりですー!」
「久しぶりだな、アヤノ。息災か」
「はい、皆とっても元気です。ソラは今、地球の学校なんでここにはいませんけど、とっても元気です。昨日会ったムサシが言ってたから間違いありません!」
「では、春野ムサシは今ここにはいないのか」
「はいー、地球に出張中です。あ、でもコスモスはいますよ。こことは反対側に」
「そうか」
「何かムサシとコスモスに用ですか?」
「いいや。近くに来たので、変わりはないかと寄っただけだ」
「変わりならありますよ、この前ミーニンの双子が誕生しました!」
「……そうか」
 つまりこの遊星ジュランは以前に私が訪れた時と変わらず、怪獣たちがのびのび生きているということなのだろう。
 春野ムサシとコスモスが目指した優しい世界が、この星では確かに実現しているのだ。
「では、この花畑は? 以前は無かったと記憶しているが」
「土壌環境の調査も兼ねて植えているもので、ジュリさんが前に来た時はここまでの広さじゃなかったから……。ここにはよく小型の怪獣たちも遊びに来るんですよ」
 そう語るアヤノの目は優しく、慈しみに満ちていた。花が風に揺れ、それに合わせて私とアヤノの髪も揺れる。
「……美しいな。これは、何という花だ?」
「コスモスって言うんです。ウルトラマンコスモスと同じ名前の、コスモスっていう花」
「コスモス、か」
 この花とあのウルトラマンの名が同じなのは偶然なのかもしれない。だが、風に揺らされてもしなやかに耐えながら優しく揺れる姿は、どことなくウルトラマンコスモスと春野ムサシの姿に重なった。
「ジュリさん、今日は泊まっていきます?」
「いいや、少し寄っただけだ。コスモスに声をかけたら、またこの星を去る」
「そうですかー。ムサシとソラにはよろしく言っておきます、またいつでも来てくださいね!」
「……ああ。必ず」
 「ジュリ」から私の本来の姿・「ジャスティス」に戻る。視界が高くなり、先まで同じ目線の高さにいたアヤノは遥か眼下に小さく見えるのみになった。
 大きく手を振るアヤノに一つ頷いて、飛び立つ。目指すはコスモスがいるというこの星の反対側。
 眼下では、広大な緑広がる大地の上で怪獣達が暮らしていた。ザンドリアスの群れが水場に集まり、ゴルメデの親子が山陰で穏やかに眠っている。
 途中、崖の上に腰掛けて大地を見渡すカオスヘッダーが見えた。私に気付いたカオスヘッダーは緩やかに手を振り、こう言うかのように微笑みながら首を傾げた。
 ──美しい星であろう?
 ああ、美しい星だとも。
 頷き返すと、カオスヘッダーの笑みが深くなったように見えた。

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