※ショタザベ(人間)×木星シャリ(怪異)の現パロ。
※CP要素はまだ薄め。続くかもしれないし続かないかもしれない。続いたらエグシャリになる。
◆◆◆
エグザベが「ゆうれいさん」の存在に気付いたのは、間もなく小学生になろうかという頃だった。
休日に家族で公園に遊びに行った時、木立の中に紛れるようにしてその男は立っていた。
伸び放題の髭とぼさぼさの髪に汚れた作業着を着ているその男は、灰色だった。まるでその男がいる場所だけ、世界から色が無くなったかのように。
父親とキャッチボールをしていたエグザベはその男に気付いて、ボールを手にしたままその男を見詰めた。その男の存在はこの明るい昼下がりの公園において間違いなく異質であり恐ろしいと感じたのに、エグザベは男から目を離せなかった。
その灰色の男はどこを見ているのかも分からなかったが、ふとゆっくりと首を動かした。伸びた前髪から、男の目が覗く。ぱちり、と目が合った。その男の目が、全てを吸い込む底なし穴のように見えて。エグザベが小さく息を飲んだ時、父が自分の名を呼ぶ声がした。すると辺りからはしゃぐ子供の声や鳥の鳴き声がエグザベを包み込むようにわっと湧き上がり、エグザベはこの時、自分はしばらくの間何も聞こえなくなっていたのだと気付いた。
父の方に視線を向けると、数メートル先でグローブを着けた父親が立ってグローブをはめた方の手を振っていた。エグザベは慌ててボールを投げ返してから、また木立の方を見る。先までそこに立っていた筈の男の姿は既になく、エグザベは目を瞬かせた。
自分は何を見たのだろう、と首を傾げながらも、エグザベはそのまま父親とのキャッチボールを続けた。
それから、その灰色の男はその後時折エグザベの行く先々に現れた。そして自分以外にこの灰色の男は見えないのだとエグザベが気付くのにもそう時間は掛からなかった。
あの人は「ゆうれい」なのではないか……テレビで放送される心霊特集バラエティを見て、エグザベはそう考えた。テレビの中の「ゆうれい」はそこにいるだけで人々に怖がられ、あるいは手形を壁やガラスに残したり、誰もいないはずの場所で物を動かしたりしている。そして「ゆうれい」は、見える人と見えない人がいる。
だからテレビが言うようにあの男の人はきっと「ゆうれい」なんだ。でも何か悪いことをするわけでもなく、ただ黙ってそこにいて、時々僕を見るだけだ。
──ぼくだけにみえる、ゆうれいさん。
そう思った時、どういうわけか胸がとくんと鳴った。
そしてこれは「ときめき」と呼ばれるのだと……そう、単語だけは知っていた心の動きを、エグザベは生まれて初めて自覚したのだった。