ぷつり、と鋭い牙が肌を貫通するその感覚はいつも甘い痛みをエグザベの全身に走らす。
エグザベの腕に牙を立てるシャリアが喉を鳴らす度に牙が僅かに擦れて、その甘い痛みが断続的にエグザベを苛み甘美な陶酔をもたらす。
陶酔の中、エグザベはシャリアを見下ろす。
シャリアさん。
僕の血が大好きなシャリアさん。
そんなに夢中で吸い付いて、僕よりもずっと歳上なのにあまりに可愛らしい。
「そんなに僕の血って美味しいんですか?」
シャリアの頬を撫でながら尋ねるとシャリアは小さく喉を鳴らし、上目遣いでエグザベを見上げた。
その様が情事を思い起こさせ、エグザベの心臓がどきりと跳ねる。そんなエグザベの様子に、シャリアが目を細めながらそっと腕から牙を離す。
ちくり、と牙が抜ける痛みにエグザベが小さく震えると、シャリアは赤い口元を見せ付けるようにうっとりと口角を上げた。
「──ええ、美味しいですよ、とても」
赤い舌が、ねっとりと口周りの血を拭う。
「一滴残らず飲み干して、君を全部私のものにしたいくらいに」
艶めいたその言葉に、エグザベの背筋をぞくぞくと興奮が走った。体の奥底から衝動が湧き上がる。
この美しい人にもっとめちゃめちゃにされたい。
この美しい人をもっとめちゃめちゃにしたい。
この美しい人と一緒に、めちゃめちゃになりたい。
「……シャリアさん」
体がひどく熱かったが、シャリアに吸血されたあとはいつもこうなので、今更気にならなかった。
熱に突き動かされるようにしてシャリアの肩に手を掛けると、シャリアが「どうぞ、君の好きなように」と耳元で囁いた。
31 2025.10
