ふわふわの日常

※犬化したエグシャリがシャアに飼われてる
※一応現パロ

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 自分の周りをころころと駆け回る小さな茶色い毛玉を目の隅に留めながら、シャリアは一つ欠伸をした。
 冷房の効いた涼しい室内の隅に敷かれた大型犬用の冷たいカーペットが、夏の間のシャリアの気に入りの場所だった。
 飼い主の帰りを待ちながら、エアコンという人間が生み出した文明の利器とカーペットの冷たさを思う存分に享受する──そんなシャリアとは対照的に、同居犬のエグザべは体を動かすのが好きらしい。
 ほんのふた月前に怪我をしているところを拾われ、怪我が治ってからも飼い主が見つからずそのまま住み着いたエグザべはまだ幼い子犬だった。柴犬と他の小型犬のミックスらしく、バーニーズマウンテンドッグのシャリアの背中にエグザべがすっぽり乗ってしまうほど体格に差がある。
 エグザベにもシャリアの隣に中型犬用の冷たいカーペットが用意されているのだが、エグザべはそこには収まらず、いつもシャリアの傍で駆け回るかおもちゃで遊んでいた。
 ──シャリアさん、シャリアさんっ。これで遊びましょうっ。
 エグザべが尻尾を振りながら咥えてシャリアに見せてきたのは、音が鳴るぬいぐるみだった。鳥を模したそのぬいぐるみはシャリアが子犬の頃よく遊んでいたもので、今はすっかりエグザべの気に入りである。
 しかしシャリアはエグザべの背中越しに、ひっくり返ったおもちゃ箱を見た。
 エグザべは体が小さいので、おもちゃ箱からおもちゃを出す時に毎回おもちゃ箱をひっくり返している。
 ──遊ぶのはいいですが、先に片付けましょうねえ。
 シャリアはのっそり立ち上がっておもちゃ箱へ向かうと、鼻先で倒れたおもちゃ箱を元に戻した。
 ──あ、ごめんなさい……。
 クゥン、と小さく鳴いてエグザべがおもちゃを咥えたまま項垂れる。おもちゃを落として尻尾もしゅんと丸くなるのを見て、シャリアはその顔をぺろりと撫でた。
 ──いいんですよ、君はまだ小さいんですから。
 シャリアは床に散らばったおもちゃをぽいぽいと箱に放り込むと、エグザべが落としたぬいぐるみを咥える。
 ──元気が一番です。せっかく怪我が治ったんですから、沢山遊びなさい。
 咥えたぬいぐるみをそのままほいとリビングに向かって飛ばすと、エグザべはぱっと目を輝かせ、小さな四肢を目一杯に動かしてぬいぐるみを追いかけたのだった。 

 そして飼い犬達のそんな様子を、スマホでペットカメラ越しに眺めて癒されている男が一人。
 シャリアとエグザべの飼い主、シャア・アズナブルその人である。シャアは部長デスクで私用スマホから堂々とペットカメラ越しに愛犬たちを眺めていた。
「ああ〜……可愛い、あまりにも可愛すぎるな、うちの天使たちは……」
 そんなシャアを部下のドレンが横目で見る。
「部長、仕事してください」
 しかしシャアは意に介さず、ペットカメラアプリの映像をドレンに見せつけた。
「さっきの会議のためだけに出社しているんだぞ、これくらい許されるだろう。ドレンも見ろ」
「若いのに示しがつかんでしょうが……む、保護した子元気になったんですか」
「ああ、もうすっかり元気だ」
「それは良かった……はい、それじゃ仕事してください」
「ちっ、騙されんか……」
 シャアは舌打ちすると渋々私用スマホを脇に置いてノートパソコンに向き合う。しかしその頭の中は、家で待つ天使たちのことでいっぱいなのだった。

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