「ああ、本当に巨神を相手にすることになるなんて。しかもかの北欧に名高い炎の巨人王スルトに巨狼フェンリルの習合ときた。君もつくづく運がいいのか悪いのか」
マスターが喚び出したダビデさんの「影」は、そう言って笑った。巨神すら倒せそうだね、と言っていたあの姿で、長いマフラーをたなびかせながら。
それはさながら、旧約聖書サムエル記及び歴代誌に描かれた、世界で最も有名な巨人退治の一場面のようで。
「アビーやサンソン君にも見せてあげたいよ。氷焔の巨人王スルト・フェンリルに立ち向かうは盾持つ乙女マシュ嬢、大英雄シグルド、戦乙女ブリュンヒルデ、そしてジャイアント・スレイヤーの僕」
何でもないことのように笑いながら、ダビデさんは杖を構える。
「──『ジャイアント・キリング』。その言葉が誰に由来する物か、日本人の君だって知らない訳じゃないだろう?」
「当たり前だろ。だからお前を喚んだんだ」
マスターの言葉に、ダビデさんは「良い判断だ」と笑った。けれどその笑顔にも構えにも、一分もの隙もない。
ああ、この人は巨人と相対する事への迷いがないのだ。恐れはあるのかもしれない、カルデアでのダビデさんは自分より背の高い女性は苦手だから。それでもこの勇者の王は、その恐れを飲み込み、立ち向かうべき敵に相対する事が出来るのだろう。為すべき事を為すために。
そう思うと、私もその姿に力を貰えた気がして。私はしっかりと盾を握った。
マスターも同じなのか、その表情は少し明るい物になっていた。そしてマスターはぐっと拳を握る。
「……ダビデ、マシュの援護頼む」
「勿論」
「マシュはブリュンヒルデとシグルドを守って」
「了解しました」
マスターの紺の瞳に、巨人王の氷焔が映る。
「……行くぞ」
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二部二章、巨人種エネミー実装とボス戦がスルトでもうめちゃめちゃ興奮してしまいました