イベント続編大作戦・グループAのぞミラ支援SSまとめ

元アスランの手下の一希とピエールの使い魔の雨彦編

闇に支配された世界も捨て難いが光に溢れた世界も魅力的だ……どっちも見るか。

それが、俺がアスランの元から離反して魔法道具屋など始めた理由だった。
気が付いたら、現マスターこと輝関のぞみの使い魔第二号として、しばらく戦えそうにないあのウサギの精霊の代わりをしていたのだが。
俺が元闇の勢力だということは分かる者には分かるようで、現にあのウサギの精霊には酷く警戒されたし、今でものぞみと共に旅をしているどこか鈍臭い魔法使いの使い魔であるカエルの精霊からは常に警戒の目を向けられている。
確かに元々闇魔法の方が得意だが、光に溢れた世界を見るためにそれなりに努力をして光魔法も習得したのだ。お陰で輝関のぞみの使い魔としてもそれなりに振る舞えている。
……まあ、先の戦闘のようにちょっとだけ闇魔法を出してしまう事もあるのだが。
だから今、互いのマスターのいない森の中でこうしてカエルの精霊に詰め寄られているのだろう。
「お前さん、まさかアスランのスパイかい?」
「違う。俺はアスランの元につく気は無い」
「じゃあさっきの闇の波動はなんだ」
「確かに元々はアスランの手下だったし本当は闇魔法の方が得意なんだが……まあ、離反した」
「何故だ」
「光に溢れた世界も見てみたかったからだ」
「…………」
カエルの精霊は、狐につままれたような顔をしている。やはり理解し難い動機なのだろう。
闇の精霊は闇を、光の精霊は光を求めるもの。
光を求める闇の精霊など、俺も自分以外に見たことが無い。
「俺はマスターには事情を全て話してある。その上での仮マスター契約だ。怪しいと思ったらいつでも背中から刺せばいい、お前の魔力が俺のマスターの魔力を超えられるならの話だが」
「……刺されない自信があると?」
「マスターは強いからな。もし俺が闇に寝返りかけてもマスターの光の力であっという間に引き戻されて終わりだ。それに……恐らく、アスランも生粋の闇ではないよ」
「何だと?」
カエルの精霊は訝しげに眉をひそめたが、俺は肩をすくめる。
「なんとなくそう感じるだけだ。今後それを知ってどうするかは俺達のマスター次第。そうだろ?」
「…………」
カエルの精霊はまだ訝しげな顔をしている。だがここで俺への疑惑を解いてどうなるということも無い、いくらでも警戒させておけば良いだろう。
「お前はそろそろマスターの所へ戻った方がいいんじゃないか。俺のマスターは俺がいなくてもあまり気にしないが、お前のマスターはお前が五分といなくなれば半泣きになり始めるタイプだろ」
「……そうさせてもらう」
カエルの精霊は俺を問い詰めるのを諦め、渋々と霊体化して姿を消した。マスターの所に戻って行ったのだろう。
俺を疑い続けるならばそれでも良し。俺は俺の考えでマスターと契約しているが、マスターを裏切るつもりは微塵もない。
しかしあのカエルの精霊、いつもにこにこ……もといにまにましているのだが、それを取っ払って俺に詰め寄ってきたという事は相当危険視されたという事だし今後もしばらく危険視されると見ていいだろう。
とりあえず、しばらくは闇魔法の使用は抑えた方がいいか。闇魔法は発動が簡単だが、命を削る魔法だからとマスターからも使用を止められている。
「っ……!」
臓腑がずきりと痛み、思わず近くの木にもたれる。久しぶりに使った闇魔法だからか、思いの外反動が大きい。
大きく深呼吸して、足に力を込める。俺もそろそろマスターの元へ戻ろう。闇魔法を使った直後に長く姿を消しては流石に怒られる。
俺は目を閉じて、マスターに怒られる覚悟を決めながら実体化を解いたのだった。