最終決戦前のピエールと雨彦編
「アスランは、悲しそうな目をしてる。だからボクは、アスランをやっつけるんじゃなくて、友達になりたい」
「また大きく出たな、マスター」
「……うん」
森の向こう、崖の上にそびえるアスランの居城を見つめながら、ピエールはぎゅっと拳を握った。
「……カズキさんは言ってた。アスランは、元々は光の魔法使いだったって。だったら、闇の魔法使いになった理由が、何かあるはず。僕はそれを知りたい。それで、絶対友達になる……!」
「そうか……もし話し合いに応じなかったら?」
「え、えっと……そしたら、アスランの気が済むまで喧嘩してからお話する!」
「喧嘩ねえ」
向こうは殺す気で来るんだがなあ、と思いつつも、マスターの意思は固そうだ。アメヒコはそれを頼もしく思いながら、いざとなれば必ず俺がマスターを守らねば、と胸に誓う。
「なら俺は、全力でマスターの進む道を切り開こうじゃないか」
雨彦はにまりと笑い、右手の中に魔力で小さな雨雲を生み出した。雨雲はくるくるとピエールの周りを巡り、雲から生まれる雨は小さな虹を映し出した。
「カエルは雨の中で歌うもの。そして雨上がりには虹が掛かる。マスターならあの暗い城に綺麗な虹を掛けられそうだ」
「ありがとう、アメヒコ」
虹に包まれながら、ピエールは力強く笑う。
それは、初めて会った時のあの気弱な笑顔とはまるで違う、けれど確かに同じ少年の笑顔だった。