シーソーゲーム(廉聖)

 二人で体育倉庫の掃除をしていたら、廉が転んだ。そして、ぶつかって押し倒された。
 不可抗力というやつなので、廉に非は無い。そしてぶつかってきた廉を避けきれなかった自分にも非はない。非があるとすれば床に転がっていたバスケットボールを放置した生徒であって、とは言えその生徒の特定が不可能に近い以上誰に非があるのかを考えても仕方がない。
 そんなことを考えながら聖は自分の胸に顔を埋めている廉の頭を見る。あ、つむじ。可愛いなあ。なんて事を考えていると、のそりと頭が動いた。目が合う。
「いってぇ……大丈夫か?」
「勢いよくぶつかってこられた割にはねー」
「ったく、避けろよ」
「転んで避ける間もなく突っ込んできたのはそっちでしょ」
「ぐっ……。そうだな、お前は無罪だ」
 雑に言いくるめてやるだけでこの素直に悔しそうな反応。やっぱり可愛い。
「ていうか……」
 重いしさっさとどいてくれない?そう言いかけた筈が、言葉は途中で喉の奥に消えた。
 廉がじっと自分を見詰めていた。
 その顔がひどく真剣に見えて、思わず黙り込む。廉は何も言わない。吐息がかかりそうな程すぐ近くに廉の顔があり、制服越しの体温で体が密着している現状をふと意識してしまう。
 ええ、何この空気。
 胸の底から熱くなりそうなそれを、自分の中ではぐらかす事で誤魔化す。それでも鼓動は少し早くなってしまうのだからどうしようもない。
 この鼓動はなに。緊張、焦燥……それとも、期待か。
 ……期待って、何をさ。
 そうは思いながらも、とりあえず廉の反応を見守る事にする。さてどう来るのか。あ、ちょっと楽しみになってきたかも。二人きりとはいえここ体育館倉庫なんですけど。それにしても可愛い顔してるよなあこいつ。
 ふっと、廉が唇を動かした。
「……悪い、どくわ」
 自分ではない体温が離れていく。聖は思わず全身の力を抜いて大の字になる。
「ええー」
「何ッでそこでブーイングが出んだ?!」
「手くらい出して来ればよかったのに」
 体を起こして床に座り込んだままそう言ってやれば、廉は顔をカッと赤くした。
「ここ何処だと思ってんだ、その発想が有罪だろうが!」
「そりゃそうだけどさあ……廉って変なとこでヘタレじゃない?」
「はァ?事故で押し倒した相手に手出すなんざ有罪だ」
「うーん、廉のそういうところほんと好き」
 ほら立て、と差し出された手を聖は見つめる。
 粗暴な脳筋のくせに紳士なんだか初心なんだか。
 大切にされているのは分かるので悪い気はしない。聖は廉の差し出した手を掴んだ。
「……じゃあさ」
 そしてぐい、と廉の手を引く。廉はぎょっとして膝を突いた。再度視線が間近で交錯する。
「俺がわざとお前に俺を押し倒させたら、廉はどーする?」
 北原が目を見開く。やだなあ、と聖は内心で苦笑する。倉庫掃除中だっていうのに、事故で押し倒されたくらいでちょっとテンション上がってきちゃったみたいだ。
 廉は聖の手を取ったまま、固まっている。多分あと数秒もすれば何か言い出すのだろうけど。
 聖は廉の顔を見ながら、内心でニヤニヤと笑う。
 さて、俺から誘った時に廉はどう来るのかな?

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3期5幕が良すぎてどうにかなりそうです。どうにかなりました。