絶対にエリセをアイドルにしたいマスターvs絶対にアイドルになりたくない宇津見エリセ

※ワルツコラボのアイドル特異点ネタ。
※マスターがエリちのこと大好き(CPではない)

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「私は何回も言ってると思うけど。アイドルになる気なんてないから」
「そんなこと……そんなこと言わずに何卒……」
「だったら屋外で土下座するのをやめて欲しいんだけど……」
 とあるライブハウスの近くにある小さな児童公園。
 そのベンチに座っている一人の少女を前に、一人の青年が土下座していた。
 少女は近くのライブハウスでこの後公演を行うアイドルグループ『乙女SHOW年』のライブTシャツを着用し、その下には彼女好みの黒いレザースカートと推しメンカラーであるクリーム色のパニエを合わせていた。
 そして土下座している青年は、黒のビジネススーツを着用していた。
 少女の名は、宇都見エリセ。このアイドル特異点にて「量産型オタク」ファッションにすっかり馴染んでしまった準サーヴァントであり。
 青年の名は、藤丸立香。現在この「アイドル特異点」にて「カルデアプロダクション」のマスタープロデューサー……マスPとして粉骨砕身する、人類最後のマスターであった。
「というかおかしいよ!! ボイジャー君も紅葉さんも俺の知らない間にアイドルになってたのになんでエリちはアイドルやらないんだよ!!」
「だから言ってるでしょ、私はアイドルなんて興味ないって」
「でもボイジャー君と紅葉さんの追っかけはしてるじゃん!!」
「そ、それとこれと話は別だから」
「今日だってシャドウにちょっとゴールド入れててネイルもボイジャー君イメージにしてさあ!! めっちゃ可愛いね似合ってるよそれ!!」
「あ、ありがとう……でも君の観察眼、時々普通に気持ち悪いよ……」
 引きながらも本日の勝負服を褒められて満更でもないエリセ。藤丸はここぞと畳み掛ける。
「エリち可愛いし歌も上手そうだしアイドルになったら人気出ると思うんだよね、運動神経抜群だからダンスだって……!」
「嫌です。そろそろ入場列形成始まる時間だから終わりにしていい?」
「始まるまでまだ30分はあるよね?」
「執念怖……」
 エリセが溜息を一つついた時、「スタッフさんこちらです!」という声が公園の外から聞こえて来た。
「こっちでマスターがエリセさんに土下座を……!」
 エリセと藤丸が顔を上げて声の方を見ると、フードを被った少女がスタッフTシャツを着たヘクトールを連れてこちらに向かって来ていた。
 とうとうスタッフを呼ばれた藤丸は悔しげに拳を握る。
「くっ、俺は絶対諦めないからなエリち!!」
「早く諦めて欲しいんだけど……」
「さらば!」
 ヘクトールが公園に足を踏み入れる寸前で藤丸は素早くどこかへ跳び去って行った。
 さながら忍者のようなその動きに、呆れ果てながらエリセは呟く。
「マスターが時々なるあの変なテンション、何……?」
「チッ、逃げられたか」
 悔しそうに舌打ちしながらも、ヘクトールはエリセを見た。
「お嬢ちゃん大丈夫か?」
「まあ、実害はないので。ありがとうございます、ヘクトール。グレイさんも」
 名を呼ばれたグレイは、「いえ」と首を横に振った。
「同じグループを応援するファンとして、困った時はお互い様ですから」
 グレイもまたフード付きパーカーの下にエリセと同じライブTシャツを着ていた。パーカーにはしっかりと赤い花のリボンコサージュを着けている。
「全く、噂には聞いてたがマスターの執念も恐ろしいな……」
 ヘクトールの呟きにエリセは「なんで噂になってるかなあ……」と頭痛を堪えるような顔で呟いた。
「二人とも、一応会場までおじさんが送るよ。そろそろ列形成が始まる頃だ」
 少女二人はヘクトールの先導で、児童公園からライブハウスへと向かうことになった。
 先までの騒動のこともすっかり忘れ、二人の少女はこれから始まるライブのセットリストを予想して盛り上がっている。ヘクトールは二人より数歩先を歩きながら、さぞいい笑顔なんだろうなと想像しながらスタッフTシャツを着た肩を回した。
 客席側で何があろうと、幕は上がる。
 いっぱいの煌めきを届けようと控室でそれぞれの準備をするアイドル達、アイドル達を裏方から支える者達、その時を今か今かと待ち望むファン達、それぞれの思いを乗せて。
 それはそれとして。
「うちわヨシ! ペンラヨシ! タオルヨシ! ミス・クレーン、今日は乙女SHOW年のライブだ、楽しもうね!」
「はいっマスPさん!」
 いつの間にかライブTに着替えた藤丸とミス・クレーンがフル装備でエリセ達と同じライブハウスに向かっていたのが、それはまた別の話。

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