【WT】二宮隊と恐竜チョコの話

 それは、学校の帰りに直接隊室を訪れた辻の言葉から始まった。

「ひゃみさん、犬飼先輩。二宮さんが発掘恐竜チョコを発掘して食べるか発掘せずに食べるか賭けませんか」
「たまに鬼みたいな発想するよね辻ちゃん。俺は発掘しない方に賭けるよ」
 最初に反応したのは、制服を着たまま隊室のテーブルに参考書を広げていた犬飼。次いで、既にトリオン体に換装してオペレーター室でパソコンの前に座っていた氷見が反応する。
「賭けとか良くないよ辻くん。私も発掘しない方で」
「賭けにならない……」
 隊室のテーブル上に、手に持っていた黄色のビニール袋をからちょうど四つの発掘恐竜チョコを出して置いていきながら、辻が呟く。ちなみにビニール袋の中身は発掘恐竜チョコがまだいくつも詰まっている。
 犬飼はそんな辻を見てニヤニヤ笑いながらテーブルに膝をついた。
「え〜何、辻ちゃんもひゃみさんも二宮さんはそんな血も涙もない人だと思ってるわけ?」
「引いた恐竜の確認すらせず丸ごと食べそうな犬飼先輩に言われたくないです」
「辻ちゃん酷い」
「血も涙もあるかないかで言ったらある方ですけど……発掘はしなさそうですよね。どの恐竜かくらいは見ると思いますけど」
 デスクから立ち上がって作戦室の方まで来た氷見の言葉に、辻は「そう」と頷いた。
「二宮さんはあれでコアラのマーチの絵柄を毎回見ながら食べてる。その点犬飼先輩はコアラのマーチを袋から直に流し込むようにして食べる」
「辻ちゃん今日当たり強くない? 俺なんかした?」
「当たりが強いも何も荒船先輩から聞いたことをそのまま話してるだけですが……」
「あいつ辻ちゃんに何話してんの」
「王子先輩も同じようなことを言っていたので、事実だと判断しました」
「犬飼先輩、それはちょっとないです」
「ひゃみちゃんまで……弧月使いのコミュニティ怖ぁ……」
 犬飼はいじけながら発掘恐竜チョコのパッケージを指先でつまんだ。そしてはあ、とため息を一つ吐き出しながら摘まんだチョコのパッケージを揺らす。
「いやでもさ……言うても、結局ただのお菓子じゃん?」
 身も蓋もないその発言に、辻と氷見はじっとりとした目を犬飼に向けた。
「そういうところですよ犬飼先輩……」
「そこで否定しないから荒船先輩や王子先輩から根も葉もある話を流されるのでは……?」
 違う違う、と犬飼は首を横に振る。
「根も葉もあるから否定したところですぐにまた広まるんだなこれが」
「自覚あるんじゃないですか……」
「まあそこまで言われたら今回くらいはちゃんと見るからさ、恐竜」
「『今回くらいは』って……」「やっぱり普段は見ないんだ……」
 好き勝手言っている後輩二名をよそに、犬飼はぺりぺりとパッケージを開ける。そして中から出て来た板状のチョコを見た。茶色のチョコの中に埋まるように、白いチョコで恐竜の骨格が描かれている。
 辻と氷見は肩越しに恐竜チョコを覗き込み、犬飼はその絵柄を見て首を傾げた。
「えーっと……この恐竜は……ティラノサウルス?」
「……トリケラトプスです」

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ワールドトリガーにハマりました。