【WT】荒船隊隊室にて(映画「ミスト」の話)

※「ミスト」の軽いネタバレがある
※ 荒船隊は全員見ている、「ミスト」を
※ オチはない

□□□□□□□□□□

「聞いてくれ、俺は恐ろしいもんを見ちまった」
「急」
「あったのか、何か」
「この前たまたま俺以外全員防衛任務入れない時あっただろ、その時に空き時間使って俺と王子、水上、二宮さん、三雲で『ミスト』を見たんだが」
「何すかその面子」
「王子と水上は分かるがそこに二宮さんと三雲」
「しかも何でその面子でミストを見ようと思ったの?」
「分からないな、チョイスが……」
「王子がそこの棚から最初に抜いたのがミストのDVDだったんだが俺もなんで止めなかったんだろうな……とにかく見たんだ、ミストを。俺以外は全員初見だった」
「メンバーと映画のチョイスの時点で嫌な予感しかしないのよ」
「加賀美の予感は正しいぞ。見てる間全員真顔だった」
「怖っ」
「こう言った非常事態下の措置や対処法についてずっと真顔で話し合ってたな」
「うわダル……まあでもそれくらいはボーダー隊員なら考えるでしょ」
「怪獣映画とか小さい頃みたいに素直に見れなくなったもんねー」
「それはそうだが全員真顔というところだな、一番怖いのは」
「穂刈の言う通りだ、実際映画より怖かったぞ。まあ俺も参加してたけどな」
「ですよね」「それでこそよ荒船君」
「真顔だったのか、荒船も」
「いや俺にはまず『ミスト』を真顔で見るのは無理だ。まあそれはいいんだが……ほら、途中で出てくるだろ。宗教おばさんが」
「いたな、そういえば」
「三門の駅前とかに一時期めっちゃ立ってたタイプっすよね、ああいうの」
「まさしくそれを王子が言い出して……」
「言いそう……」
「二宮さんと三雲も『言われてみれば』と同意してだな」
「真顔で?」
「真顔だ」
「怖いな」
「そしたら水上がふわっと食いついた」
「ふわっと食いつくって何?」
「それほど前のめりでもないが興味はある、みたいな……大阪でもその辺は百パー無縁ってわけじゃないらしいからな。それで俺も含めて三門市の人間達で水上に色々その……話したんだな、一時期の三門市の駅前の話とかを」
「ミストを見ながら『本物』の話をしてる状況怖すぎません?」
「現実が強すぎて霞み始めたな、ミストが……」
「それでだな……だんだんやけに水上の食いつきが良くなってきて……」
「何が触れたんだ、水上の琴線に……」
「そして王子と水上の間の話題が非常事態下の人心掌握術になっていった」
「ッス……」
「半崎くんが引いてるわよ荒船くん?!」
「俺はあった事を話してるだけだぞ?!」
「そっちの二人はともかくどうだったんだ、二宮さんと三雲の方は」
「二人はそっちの方は興味なさそうだったな、まああの状況下における民衆の動き方とかは話してたが……その辺りで思った、見る映画間違えたなと」
「遅いな、気付くのが」
「『キャビン』とか『来る』とかにしとけば良かった」
「なんでチョイスがホラーばっかりなんすか」
「でもその面子で映画鑑賞会をやった荒船君の度胸は評価に値するわ……」
「しかもその後その面子で防衛任務したんすよね……?」
「したぞ。玉狛第2と二宮隊が合流して、俺と王子と水上は三人の臨時部隊で、細井のオペでな」
「防衛任務か……あの結末を見た後に……」
「にしても犬飼くんとか呼べるなら呼べばよかったのに、二宮さんや三雲くんだって内心気まずかったかもよ」
「犬飼と空閑とあの新入りはなんかもっと怖い反応が出て来そうだし辻とちびちゃんに見せるのは普通に良心が咎めるだろうが」
「辻と雨取以外は咎めないのか、良心が……」
「二宮さんと三雲にしても普通に会話には参加してたぞ、まあ三雲は最初こそ『何故自分がここに?』みたいな顔してたがミスト見てる間は真顔だったし二宮さんとの話も弾んでたしな、出水の弟子同士ちょっと仲良くなれたんじゃないか」
「出水くんも自分の弟子がミストを真顔で見ることで仲良くなってるとは思わないと思う」
「いっそ出水にもミスト見せるか……ちょうど射手訓練用メソッドを考えてるところだしな……」
「新手の拷問か?」
「A級1位部隊の隊員にミストを見せながら考え出される射手訓練用メソッドって何よ」
「それなら二宮さんにも聞けば良かったんじゃないすか?」
「そうだよなー、真顔ミスト鑑賞に驚きすぎて忘れてたぜ……」
「……荒船の話を聞いていると見たくなってきたな、ミストを……」
「俺も話しながらちょっと見たくなってきた」
「うわダル……」
「絶対に嫌だからね」

終。

others作品一覧へ戻る
作品一覧ページへ