あなたが痛みを背負わず済むなら(ヒカル)

 タロウをトレギアと戦わせたくない。
 トレギアの話を最初にタロウから聞いた時、胸に過ぎったのはその思いだった。
 トレギアがやろうとしている事も、トレギアがやった事で俺達が被った害も、そういうの全部すっ飛ばして、タロウとトレギアを戦う事を考えた時に、拒否反応に近いものが胸中に沸き起こってくるのを感じた。
 タロウはきっと、必要となればトレギアと戦う覚悟をとうに決めている。宇宙警備隊筆頭教官……だっけ? タロウは光の国の重鎮で、盾で、必要となれば身を呈して光の国を守る覚悟だってある。
 それでも、嫌だった。
 トレギアと戦う事でタロウが苦しむのが嫌だった。タロウにそんな思いをさせるくらいなら俺がトレギアと戦う。
 俺がそんなことを思っても、タロウは俺より強いからそんなの余計なお世話だ。
 だからこれは、多分俺のワガママ。
 だって俺の知ってるタロウは、タイガが萎縮してしまうような、そんな近寄り難い肩書きを持つ偉い人とかじゃなくて。
 早く大きくなりたいと嘆いて、俺に夜な夜なウルトラマンや怪獣の話をしてくれて、偉大な父親の存在に悩んだ事だってある、そういう、温かくて優しい、もう一人の父親のようでうんと年上の友達のようでもある人だから。
 そんな人が悲しい気持ちや自分の痛みを押し殺してかつての親友と戦うだなんて、俺には耐えられない。
 だから、タロウに戦わせる位なら、俺がトレギアを…… 

「……なんてお前は考えてるのかもしれないが、一人で抱え込むなよ。トレギアを倒すのは『俺達』だ」
「……ほんっと、ショウは俺の考えることなんてお見通しだよなあ」

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