突然だが、ギンガ(本人の方)がふわふわのぬいぐるみになってしまった。
「なんで?」
朝目が覚めたらギンガスパークのすぐ隣でころころ転がっていたふわふわのギンガをヒカルが両手で拾い上げると、ギンガは短い腕をヒカルの方に伸ばした。
『──どうやら私は、ふわふわになってしまったようだ』
「それは見れば分かるんだよな……てか喋れんだな、いつもライブ中しか喋れないのに」
両手のひらに触れるギンガの感触がなんだか心地よいので、頭を撫でてみる。
『む……ふわ……』
撫でられて気持ちいいのか、ギンガは目を細める。
「あはは、ギンガ可愛いな。猫みてえ」
『むむ……』
「でも外に連れていくのもなあ〜……今日は非番だけどさ」
ひとしきりギンガを撫で回してから、ヒカルはふわふわのギンガをベッドの上に優しく置く。
「ライブ出来んのかな」
『出来ないこともないだろう。しかし……』
ふわふわのギンガが言い淀む。迂遠な言い回しの多いギンガでも言葉に詰まることは珍しい。ヒカルは「あ、そっか」と気付いてまたギンガの頭を撫でた。
「俺がそんな感じのふわふわになるかもってこと?」
『その可能性はある』
「……それはそれでちょっとやってみたいかもな」
街に降り立つ五十メートル級の巨大なふわふわを思わず想像したその時、ヒカルの意識を鋭い光が一つ貫いた。はっと顔を上げると、カーテンを開けて空を見る。
そこにはウルトラサインでこう書かれていた。
『各位 エックスがふわふわになったので呼ばれても行けません 大空大地』
『各位 ヒカリがやらかした。ふわふわになった者は至急返信するように ゾフィー』
「ヒカリがやらかしたのかー……エックスもってことは俺らみたいなのはだいたいこうかな。ハルキとゼットとか大丈夫かあ……?」
呆れ半分面白半分の心境で、ヒカルはゾフィーのウルトラサインに返事を送る。
「てことはショウとビクトリーも……」
そう呟いたところで、玄関チャイムが鳴った。
「やっぱりかー」
面白くなってきた。
ギンガもビクトリーもおそらく戦えない……という非常事態ではあるのだが、ふわふわのギンガの姿があまりに可愛らしいのでそんなことすっかり忘れてしまいそうになる。
ヒカルはギンガを腕に抱え、玄関へ向かう。
さてあいつはどんな顔してるのかな、とわくわくしながら、ドアの鍵を開けた。
おまけ
他被害者の皆さんのふわふわファーストインパクト
ショウとビクトリーの場合
「…………。……?!」
「……」
大地とエックスの場合
「大地!大変だ!この姿ではあまりに可愛らしくて戦えない!」
「……俺もそろそろ徹夜できる年齢じゃないってことか……」
「夢じゃない!夢じゃないぞ!おい!起きるんだ大地!」
ハルキとゼットの場合
「ゼットさん何ですかその可愛いお姿!!!!!!!」
「落ち着くんだハルキ!!あっやばっ立てないこれ、えっ待って重心がこれああー!!」
「ゼットさん!!!!!!!」