カテゴリー: FGO

カルデア小話「BasterTシャツ」

「見てくださいなマスター!ダビデ王が売り物だけど特別に、ってくださったの、バニヤンとお揃いで、ナーサリーやジャックとも色違いなんですって!お揃いって素敵ね!」
 そう言いながらアビゲイルが胸の前に抱き締めるその真っ赤なTシャツ。どことなく見覚えがあるような気がしてそのTシャツをよく見せてもらうと、胸の部分にはっきりこう書かれていた。

 Baster。

「今からお揃いを着て皆で遊ぶのよ!」
「そう、楽しんで来てね」
 ととととと、と元気良く走っていったアビゲイルを見ながら、藤丸は呟いた。
「ここであれ売ってるのあいつだったんだ……」

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アビゲイル幕間がとても良かったのと復刻水着ノッブ引けた記念。

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とある夜に(龍竜)

FGOの帝都聖杯戦争、ぐだ・オル田出現前の時間軸です。土佐弁勉強中なので間違ってても勘弁してください。

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 サーヴァントが夢を見るのかどうか、については諸説あるらしい。それではそのサーヴァントの宝具が意思を持っていた場合、夢を見ることはあるのかどうか。
 正直、その辺はお竜にはどうでもいい。だが、 仮に夢を見たのでなくとも唐突に思い出す事はある。
「っ……!リョーマ、リョーマ!」
 深夜、丑三つ時を回ろうかという時刻。布団の上で丸まっていたお竜が唐突に飛び起きて隣の布団で眠る男に抱き付くと、「ぐえっ」とお竜の下から蛙にも似た声がした。
「リョーマ、リョーマ」
「ちょ、痛いって……どうした、お竜さん」
 お竜は目を覚ましたがまだ半分寝起きの龍馬の顔を無遠慮にぺたぺた触る。感触がある、体温がある、見つめれば見つめ返してくる。
 やがてお竜のただならぬ様子を理解したらしく、龍馬はお竜の背中に手を回した。抱き締めて、優しくさする。
「……怖い夢でも見たが?」
「夢……いや、夢じゃない。ただ、思い出した」
「そっか。話したくないなら、話さんでええよ」
「……うん」
 ぽん、ぽん、と背中を叩かれ、全身をじんわり包む安心感にゆっくり体の力が抜ける。肩にぐいぐいと顔を埋めると、龍馬は苦笑しながらもう片方の手でお竜の髪をそっと撫でた。
「……大丈夫、今の僕はそう簡単に死んだりしないから」
「そういうところがお竜さんは心配なんだぞ」
「弱くてすいません」
「そうじゃない、リョーマは生きてた頃よりちょっと強くなったくらいで調子に乗りすぎだ」
 顔を上げて少しだけ体を起こすと、眼下に龍馬の顔を見下ろす。
 龍馬はお竜の視線に少しだけ居心地が悪そうにしながら苦笑した。
「調子に乗りすぎって……」
「サーヴァントになったところでリョーマの体はお竜さんより柔らかいし、リョーマはお竜さんが持てるのより重たい物が持てない。結局お竜さんの方が強い」
「……そうだね、僕よりお竜さんの方が強い」
「それなのにリョーマは前に出るしお竜さんを庇おうとかするし勝手に怪我するし……心配するお竜さんの身にもなってみろ」
 お竜の不満げな言葉に、龍馬は少しだけ目を見開いた。
「……ごめん。僕、そんなに前出てた?」
「出てるぞ」
「え……それは、ほんとにごめん」
「分かればいいんだ分かれば。うん、リョーマの悪いところをちゃんと指摘出来るお竜さんはやっぱり出来る女だな」
 言うだけ言って満足したお竜はふわりと力を抜くと、龍馬の体の上で寝そべり始めた。
「あの、お竜さん、そろそろ体の上からはどいて欲しいかな……僕が寝返り打つとお竜さん落ちるよ?」
「む、お竜さんがそんな事で落ちるわけない」
「僕が寝れないんだけど……」
 お竜は龍馬の不満などどこ吹く風で、龍馬の左胸に耳を当てた。とくとくと確かな鼓動と体温が、服の下、薄皮の下で流れる体温の存在を知らせてくる。
「サーヴァントとは不思議だな、リョーマはもう人間じゃないのに人間みたいだ」
 間違いなく一度死んだ人間の龍馬と、竜として天にも昇らず海の底に消えた自分がこうしてサーヴァントとその宝具として二度目の生を受けているのだ。サーヴァントシステムとは奇妙なものだが、嬉しくはある。ので、お竜は僅かな笑みを口元で湛えながら言う。
「リョーマ」
「何じゃ?」
「お前がサーヴァントになるような人間でよかった」
「……本当は、僕が出動しなくて良くなるのが一番なんだけどね」
「むう、一言余計だ」
 お竜が頬を膨らませて右手を伸ばして龍馬の口を塞いでやると、「ごめんごめん」と手の下でもごもご口が動いた。
「分からないぞ、普通の聖杯戦争にお竜さんとリョーマが呼ばれて勝ったりしちゃうかもしれない。お竜さんは強いからな、開催地が日本じゃなくてもその辺の英霊まとめてポイだ」
 お竜の自信満々な言いように龍馬は肩を振るわせて笑った。手を離してやると龍馬は一度大きく息を吸ってからまた笑い出した。
「はは、そりゃ心強いな。それじゃその時も頼りにさせてもらいます」
「リョーマは聖杯を手に入れたら何を願うんだ?お竜さんは色々、沢山あるぞ」
 お竜の問い掛けに、龍馬はしばし考え込んでからゆっくり口を開く。
「そりゃまあ……世界平和とか、皆が笑顔になれる世界じゃないかな?聖杯で叶える願いでもないと思うけどね」
「真顔でそういうこと言うから抑止力にこき使われるんだぞリョーマ」
「ははは、僕は別にそれでもいいとは思うんだけど……お竜さんは嫌?」
 抑止力にこき使われるのもいい、という龍馬のスタンスが若干気に入らないお竜は少し口を尖らせながら、素直に思うところを言う。
「お竜さんはリョーマが商売で悠々生活出来るようになる方が嬉しい。そうすればお竜さんはカエルをいくらでも食べられるし、リョーマも余計な傷を作らなくて済む。うん、完璧だな」
「……だからって、聖杯を手に入れても僕の受肉なんて願わないでね?僕、今のあり方結構気に入ってるし……今の時代を動かすべきは僕らじゃないだろ?」
「分かってる、やらないやらない」
 いや本当に、坂本龍馬という男はこういうところがままならない。
 誰もが幸せな世界とやらの想定に自分が入ってないのだ。最悪自分が消えても皆幸せになれればいい、くらいの心構えなのだ。そんな心構えで戦ってたら抑止力だって都合良くこき使うに決まっている。というか生前からそんな感じだったから抑止力に目を付けられたのだこの男は。
 だってサーヴァントなんて過去の英雄の影法師でしかないよ、と龍馬は言うのだろうが、やはりお竜は納得がいかないのだった。
 だって人間って、自分が生きることと自分が幸せになることを第一に優先するのが普通じゃないのか。だから自分はあの山に封印されたのだ。いや、今のリョーマはサーヴァントなのだが……とまで考えて、どんどんややこしくなる思考にお竜は考えるのをやめた。
 龍馬の上から布団の上に転がり出ると、うーんと伸びをして呟く。
「やっぱりリョーマはお竜さんがいないと駄目だな」
「はは……これからもよろしく頼むぜよ」
 くるりと体を丸めると、「体冷えちゃうよ」と龍馬が自分が先程蹴飛ばしたままだった掛け布団を掛けてくれた。
「……なあリョーマ、明日くらいはゆっくりしていいと思う」
「そうかもねえ……それじゃ明日は遠くからの偵察中心にして、蛙でも探しに行こうか」
 龍馬からの提案に、お竜は目を煌めかせる。
「よし、デートか。デートだな。お竜さん張り切っちゃうぞ。明日の昼はお竜さん特製愛妻弁当だ」
「僕の分は人間が食べられる物で頼むよ」
「任せろ。お竜さんの才能に震えるといい」
「楽しみにしてるよ、……おやすみ」
「ん、おやすみ」
 優しく頭を撫でられる。大丈夫、今度こそ近くに、ちゃんといる。掌から伝わる温度に安堵しながら、お竜は今度こそ眠りに身を委ねた。

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龍馬の声帯とビジュアルに逆らえず放送局の次の日には原作を買って読んでイベントでまんまと帝都ライダー組のオタクになりました。人間×人外好きが逆らえる訳がなかった。
土佐同盟礼装大好き……

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天竺行き途上にて(ダビデと書文先生)

天竺イベのダビデと書文先生。
ダビデの体質云々は捏造です。

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 偶然触れたその手は、氷にでも触れたかと思うほど冷たかった。反射的に引っ込めると、隣に座っていたその手の主が首を傾げる。
「書文くん、どうかしたかい?」
「ああ、すまんなダ八戒。……お主の手が、あまりに冷たいものでな」
「それはすまないことをした、でもこれは僕の体質みたいな物でね、仕方ないと思って諦めてくれ」
 そう言って何事もないように笑いながら、ダビデは手にした木の枝で焚き火の火をつつく。
 書文はその様子を観察しつつ、その様子におかしな点が無いかどうかを確認する。一見おかしな様子は見受けられないが、しかし枝を動かす腕の動きが固いのを目に留めた書文は僅かに目を細めた。
「アビシャグといったか、老齢の期にお主の体の冷えを温めるために仕えた少女は」
「そう。彼女はとても良くしてくれた」
「アビシャグを求めるのは、今も体の冷えが重いからだと?」
「本当に冷えが重くなるのは時々だけどね。それもあるけど……まあ今の僕らは修行中の身なのだから、この手の話はやめておこう。気遣いどうも、でもこの体質は治りようがないからさ、君が気にする必要はないよ」
「……そうか。だが旅に支障が出そうであれば儂にでもマスターにでも言うのだぞ」
 書文の言葉にダビデは僅かに目を見開き、次いで頬を綻ばせた。
「ありがとう、君は優しいね」
「共に旅をする仲間に何かあっては皆の負担が増えると言うもの、そうなる前に負担の軽減に務めるのが沙悟浄としての役割と見たまでよ」
「マネジメントが上手いねえ」
 ふと、衣擦れの音と共に、「ウサギさ~ん……まって~」と三蔵の寝言が二人の耳に届いた。
「お師匠ってば、また布団をけ飛ばしてるよ」
 ダビデは立ち上がると三蔵の寝床へ向かい、そっと布団を掛け直してやる。
 足の動き、日頃のダビデと比較してややぎこちない。毛布を掴むのに指先が上手く動かず二回ほど掴むのに失敗。
「……ところで。今日の不寝番はお主ではなく儂一人だったように思うのだが」
 ダビデが戻ってきたタイミングを見計らって言うと、ダビデは肩をすくめた。
「ばれてたか」
「今日は眠れぬ程に冷えが回っているということか?」
「カルデアなら湯たんぽとかあるからいいんだけどさ」
「肩から毛布でも被ると良い」
 使っていない毛布を手元に引き寄せて肩から掛けてやるとダビデは嬉々として毛布で全身をすっぽり包んだ。
「いやあ、この旅の中で書文君のイメージ変わったなあ。君いつもベオウルフ君と鍛錬してるだろ、その割に随分と面倒見いいじゃないか」
「子供達の遊び相手をせがまれることもあるからな」
「なるほど」
 他愛ない会話をしながら温かい茶を湧かす。いつもと違い湯呑みは二人分。
「時にダビデよ、お主は武者として非常に優れていると聞く」
「ええ~?僕に戦士としての能力を求めるのかい?」
「王として大軍を率い自らも剣を取り前線で戦い、武人になる以前にも熊や獅子の尾を掴んで叩き殺したという武勇はあまりに有名であろう」
「悪いけど僕は戦いは根本的に嫌いなんだ。それに僕の武勲全般は神の加護があったからだから、君達とは全く別物だよ」
「むう……それは残念だ。一度手合わせしたかったのだが」
「そういうのは呂布君の方が向いてると思うよ……」
 湧いた茶を湯呑みに注いで渡してやると、ダビデは湯呑みを両手で包み込むように持って目を細めた。
「久し振りだなあ、こういうの」
「久し振りとは?」
「羊飼いだった頃に寝ないで羊の番をしたり、先王に追われて夜の荒野に何泊もしたりしたことがあってさ。でもこの旅の中のこの夜は、そういうのとは違う。何というか……うん、浪漫がある」
「浪漫か」
「うん。経典を集めて、試練を乗り越えて、天竺へ向かう。その旅の途上で寝ずの番をする。生前では出来なかった事だ。こんな事言ったらカルデアで心配しているであろうマシュ嬢達には怒られるかもしれないけど……僕は楽しいし終わって欲しくないとすら思うよ、この旅」
 そう呟くダビデの目は、輝きの奥にどこか哀しみを湛えているように見えた。だが書文は「そうか」とだけ頷く。
「……ま、そんなの無理な話だけど。僕らは人理を修復するためにマスターに喚ばれたサーヴァントなんだから。この旅はきっといつか終わる。だったらせめて、最後まで楽しむさ」
 ダビデは茶を一口啜ると、ほうと息を吐き出した。
「お茶、ありがとう。少し楽になってきたよ」
「それはよかった。まだ眠れぬなら話し相手くらいにはなれるが?」
「じゃあお願いしていいかな。僕はこの辺りの世界や時代とは縁のない英霊だから、君に色々聞きたいよ。聖杯からの知識で補えない事って色々あるだろ?」
「とはいえ儂も近代の生まれなのだがな……」
 ぱちぱちと焚き火が弾け、夜の静寂に静かな話し声が吸い込まれていき。結局二人での不寝番は、呂布が一番に起き出してくるまで続いたのだった。

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一日限りの逃避行(ぐだダビ)

「……こんな時間が、ずっと続けばいいのにね」
 燃え上がるような夕陽を前にして陳腐な言葉しか言えない自分の貧弱な語彙が惜しい。それでも、ベンチの隣に座るダビデ王は「そうだね」と言って笑ってくれる。
 レイシフト先でダビデの魔力を使ってカルデアからのありとあらゆる追跡手段を絶つことで手に入れた、たった一日限りの正真正銘の二人きりの時間。
 一日だけでいい、ダビデと二人きりになりたかった。理由は分からない、曖昧なままここまで付き合わせてしまったのに、結局二人きりで一日過ごしても分からなかった。
「……ありがとう。俺の我が儘に付き合ってくれて」
「僕は君のサーヴァントだからね。満足出来たかい?」
「……うん」
「それは良かった」
 ダビデは微笑むと、飲んでいたカフェオレの缶をベンチに置いた。
「……さあ、そろそろ時間だよ、マスター」
 燃えるようなオレンジの光がダビデに降り注ぐ。若草色の髪は光に呑まれ、一瞬光の色に染め上がった。どこか悲しげだが優しい笑顔の中若草色の瞳だけがそのままで。
 俺が声を上げる間もなく、意識はぷつんと途切れ闇に閉ざされた。

blessing for you(再録)(ぐだダビ)

本番描写はないですが魔力供給をするにあたりマスターが童貞です。
一・五部までのネタバレとか原典からの自己解釈とか色々注意。

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 夢を見た。
 どんな夢かは具体的には覚えていない。
 ただ、その夢が暗く、重く、痛く、苦しく、寂しく……喪失感に満ちていた事だけは、目が覚めた時酷く胸に迫ってきた。
 恐らくサーヴァントの誰かの夢なのだろうと思う。誰の夢なのかは分からない。ただ、その夢を見ていた誰かがそっと夢から自分を出してくれたような気はした。
 ぼんやりする頭を押さえながら、時計を見る。六時半。起きるには丁度良い頃合いだ。
 ふと、無性にあの羊飼いと話がしたいと思った。