「わあ、お二人こうして並ぶと本当の兄弟みたいですね!」
着替えやメイクを終え、スタイリストにそう言われた薫が同じく着替えやメイクを終えた直央を見ると、直央は顔を真っ赤にして薫から目を反らした。
今日の仕事はドラマの撮影。315プロダクション所属・DRAMATIC STARSの桜庭薫ともふもふえんの岡村直央の二人で、兄弟役で一話限りのゲスト出演をすることになった。いずれ二人には一緒にお仕事して欲しいと思ってたんですよ、とプロデューサーには熱弁された。
ーー桜庭と直央って、なんか似てるよな!
そんなことを某馬鹿が言っていたな、と薫はふと思い出す。
名家の長男と年の離れた弟、という設定のキャラクターに合わせた、同じブランドの仕立てのいい服を着て並ぶと、成る程確かに兄弟に見えるのかもしれなかった。
自分以外全員年下の未成年という選抜メンバーと共に仕事をしたことはあるし、直央を初めとするもふもふえんのメンバーとは事務所でよく会う。一緒に仕事をするのは初めてだった。
「弟」である自分が「兄」の役を演るという不思議な違和感と、自分より年下の直央の方が演技経験は長いというギャップ。今日はむしろ学ばせてもらうくらいの姿勢でいよう、と姿見を見て改めて思う。
「今日はよろしく頼む」
直央の方を見て言うと、直央は慌てたように、同時に少しだけ怯えたように、
「よっ、よろしくおねがいします!」
と頭を下げたのだった。
ーーいいですか薫さん、もふもふえんの子達はまだ僕達より小さいんですから、あんまり怖い顔しちゃダメですよ!
そういえば柏木にそんなことを言われた、と思い出したのは、そのすぐ後のことだった。
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2016年5月頃に書いたもの。
当時はまだドラもふ共演イベがなく、事務所の寸劇で絡みが描写されていた程度で桜庭と直央の距離感もよくわからず、この二人兄弟みたいだけど絡み少ないなあと思って書いたものです。
執筆当時Privateerに掲載していたのですがあまりに短く単品で別所に公開するにも気が引けてどこにも出さないままだったのでここで公開出来て良かったです。
サッカーイベ最高だった……