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アクセス・フラッシュ!(メビウスとヒカリ)

※グリッドマンネタ

「プライマルアクセプター……いいな!」
「急に何を受信したのヒカリ!?」

「……というわけで、プライマルアクセプターの試作品を作ってみた」
「受信から行動までが早すぎる……」
 宇宙科学技術局、ウルトラマンヒカリの研究ラボ。作業台の上に広げられたブレスレット型のアイテムを見てメビウスはげんなりと呟いた。
「確かに同社だけどこれはウルトラマン向けのアイテムじゃないよ……」
 ヒカリが開発したプライマルアクセプターの試作品、プライマルアクセプターという名を冠するだけあり、プライマルアクセプターそのままであった。そう、かのアニメに登場した変身アイテムそのままのデザイン・形状・色彩。大人向けレプリカ系玩具として今すぐ売り出せそうである。
「何を言う、ちゃんとウルトラマン向けの調整はするさ。俺がしたいのは、このアクセプターの機能のウルトラマンに向けた形での最適化だ」
「機能……最適化?」
「お前も昔やったことあるだろう、電脳空間内に自分のデータを送り込んでその中で怪獣との戦闘」
「うん」
「電脳空間内への転送機能はメビウスブレスにたまたま備わっていたからいいものの、全ての変身用アイテムに備わっているわけではない。変身アイテムを使用しない者もいる。そこでこのプライマルアクセプター」
 ヒカリはアクセプターを自分の顔の前に掲げた。
「宇宙警備隊員達が安全かつ確実に電脳空間内で戦闘出来るよう、今後これが必要になる時が来るのではないかと俺は思う」
「はあ……」
 ヒカリがそう言うならそうなのかもしれない。そんな気がしてくるメビウスだったが、ヒカリの押しの強さは並大抵のそれではないことを思い出す。そしてここで自分がこの驚きの押しの強さに負けてしまうと誰もヒカリを止められなくなるのだ。そう、ゾフィー隊長ですら。ヒカリが暴走した時最後に(物理的に)止められるのはウルトラの父だとかウルトラマンキングだとかそういうポジションの方々になってしまう。
 つまり自分が最後の砦なのだ、そうメビウスは自覚していた。
「いや、そうだね、そうだけどヒカリ……」
「なんだメビウス」
「せめてデザインは変えようよ……」

 こうしてヒカリによる『プライマルアクセプター配備計画』は『ウルトラランス電子変換機能搭載計画』へと形を変えることになるのだが、それを知っている者はメビウスとヒカリのみである。

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「メビウス兄さん!」(ゼット、メビウスとヒカリ)

「うおお! メビウス兄さん! お目にかかれて光栄ッス!」
 ゼロの紹介で科学技術局までやって来たその宇宙警備隊候補生は、俺の隣に立つメビウスを見て目を輝かせた。
「め、メビウス兄さん……?」
 メビウスは面食らった顔をしている。初対面の相手にいきなり兄さんと呼ばれて戸惑うのも当然か。ところでこの被検体……じゃなかった、サンプル提供者の名前はなんだったか。ウルトラマンゼット。ゼットか、ふむ。
「はい! メビウス兄さん、ウルトラ兄弟十男! 俺、めちゃめちゃ尊敬してるッス!」
「え……あ、そ、そう……ありがとう。ええと、君は……」
「ゼロ師匠の一番弟子、ウルトラマンゼットっス!」
「そうか、ゼット。これからもゼロの下でしっかり励むんだよ」
「はいっス!」
 メビウスはなんとか威厳ある態度を取ろうとしているが、頬が緩むのを抑えきれていない。
 慣れない兄さん呼びに戸惑ってはいるようだがよほど嬉しいのだろう。弟弟子に当たる筈のギンガもタイガもこいつを兄さんとは呼ばないしな……「兄さん感」より親しみやすさが勝るのはメビウスの美点とも言える気はするが。
「さあゼット、行きますよ。ヒカリ博士達はこれから準備がありますので」
 ゼットをここまで連れて来た局員に促され、ゼットは「それじゃあ!」と深々頭を下げて行ってしまった。
「……あれがゼロの弟子か。また随分騒がしいやつだな」
「元気でいいじゃないか」
 メビウスは随分機嫌がいい。 
「それじゃあ俺は今からアイツからデータを取りに行く。お前は早く帰れよ、あまり長く拘束してると俺がゾフィーに怒られる」
「平気だよ、ゾフィー隊長もそんなに厳しくないって」
 そうでもないんだなこれが。あいつはお前には甘い。
 手を振ってメビウスに背を向ける。じゃあね、と背中にメビウスの声が掛かる。
 ふと、角を曲がる前に廊下を振り返った。メビウスの背中が、僅かに丸まったのが見える。
「……よっし!」
 俺の耳に、確かに声が届いた。ガッツポーズだった。背中からでも分かる、これ以上無いくらい綺麗なガッツポーズを、メビウスは決めていた。
 角を曲がって廊下を進んで研究室に入って、端末を立ち上げる。そのまま建物のセキュリティシステムにアクセス。科学技術局を死角なく映す監視カメラの数分前のデータを一気に閲覧する。程なくして、目的の瞬間は見つかった。
 一カメ、二カメ、三カメ。ついでに四、五カメ。監視カメラは、あらゆるアングルでその瞬間をしっかりと捉えていた。
 満面の笑みを浮かべた、メビウスのガッツポーズを。
「……なかなかいい物が撮れてしまった」
 とりあえず動画と写真の両方だな。
「どうかしましたか、ウルトラマンヒカリ。そろそろサンプルデータ採取の準備が出来ますが……」
「ああ、すまない。今行く」
 助手の局員に促され、急いで端末にデータを保存する。
 年下の「兄」が忘れた頃にこれを見せてやった時、どんな反応をするのかかひどく楽しみになってきた。

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兄さん呼びされて以降ゼットくんに激甘になってしまったメビウスが見たいです。

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