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無題

君たちはどう生きるかを公式からスチル出る前に見に行ってたんですけど、食人インコが頭から離れないし父親キャラ好きな人は見に行った方がいい

【石田親子】6月某日

「私が父親で良かったと思うか」
 ほとんど酔い潰れて──連れて帰って来た黒崎のお父さんに何度も謝られた──ベッドの上に横になった竜弦は、どこかぼんやりとした目で僕の服の裾を掴んでそう小さな声で呟いた。
「良かったんじゃないのか、僕はこうして普通の生活を送れているわけだし」
 こんな事を言っても酔いが醒めたらどうせ覚えていないだろうしまた同じことで悩むんだろうこの父親は。そんなことを思いながら、裾を掴む指を解いて、掛け布団を竜弦の上に広げてやる。
「だから少なくとも今は、あんたが親で良かったと思っているけど」
「……そうか」
 竜弦は少しだけ安心したように呟いて目を閉じた。そのまま安らかな寝息が聞こえて来たので、僕は父の寝室を後にした。
 これから何度あんなことを言ってやれば良いのやら。いっそ素面の時に言ってやろうか……いや、恥ずかしいからやめよう。向こうだってあんなこと素面では聞けないのだから。
 全く、手の掛かる父親で困る……そう思いながら首を横に振る。
 よりによって父の日の前日に、そんなことで思い悩まなくてもいいだろうに。

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【一心と竜弦】院長室、一人と一人

※藍染による空座町侵攻直前の話

「よお、調子はどうだ?」
 その声は、院長室の入口のドアではなく壁際から聞こえた。
 デスクでノートパソコンと大きなサブディスプレイに向かい合っていた竜弦は、声のする方には顔を向けず指はキーボードから離さず、ただ言葉だけを返す。
「何の用だ」
「様子を見に来た」
「貴様は貴様でやることがある筈だろう、さっさと帰れ」
「つれねえなあ」
 声の主はそうぼやくが気にした風もなく、デスクの方に歩み寄ってきたかと思うと竜弦のノートパソコンとディスプレイを肩越しに覗き込んできた。
 男の体で光が遮られて視界が暗くなるが、退かせるのも面倒なので竜弦は打鍵とマウス操作をやめない。
「……入院中患者のリストか」
「万が一目を覚まされたところで私しか対応出来ん」
「……そうだな、頑張れよ」
「余計な仕事を増やしてくれたものだ……」
『この町にとある悪党の手が迫っています。
 なのでこの町を守るために丸ごと尸魂界に転送します。
 住民の皆さんにはその間眠っていただきますが、強い霊力をお持ちのアナタには全く効かないでしょうから事前にお伝えしておきます。
 アタシ以外にアナタのこと知られるとアナタも何かと面倒でしょうから、なるべく病院から出ないでおいてください☆』
 駄菓子屋店主が隠し倉庫に残して行ったあのふざけたメッセージのことを思うと頭が痛くなる。この病院にどれだけの人間が入院していると思っているのか。
「……何だか知らんが、人間を巻き込むな」
「……ああ、そうだな」
 思わず溢れた独り言に返ってきた相槌がひどく重苦しいものに聞こえたので、竜弦は初めてディスプレイから視線を外して振り向いた。
 黒い着物を身に纏ったその男は、腕組みをして竜弦の背後に立っていた。
 その表情は険しかったが、すぐに取り繕うような笑顔に変わった。
「それ、手伝うか?」
 作り笑顔がひどく癇に障るので竜弦は視線をディスプレイに戻した。
「要らん。貴様は自分の家にいろ」
「……そうかい、ありがとよ」
 礼を言われる覚えはないので無視してパソコンの操作を続ける。
「そんじゃ、俺は帰るわ」
「さっさと帰れ」
「おーおー、それじゃあな」
 男の気配が背後から離れていく。
「黒崎」
 名前を呼ぶと、壁をすり抜けてきたくせに律儀にドアから出ようとしていたらしい男……黒崎一心が振り向く。
 最初に名前を呼んだ時は驚いていた癖に、あれから一週間と経っていないにも関わらず今では驚きもしていない。
 人間的なものか年長ゆえのものか分からないが、その余裕に僅かに苛立ちを覚えながらも、竜弦は言葉を続けた。
「死ぬなよ」
 この頑丈な男が死ぬと本気では思っていない。
 ただ、必要があれば自分の命の優先度を下げることに躊躇いのない男であろうことは分かっている。なのでその言葉を投げ掛けた。大した抑止にもならないだろうが、言わないよりはマシであろうと。
 一心は竜弦の言葉に目を見開いたが、すぐにニヤリと破顔した。先の作り笑いとはまるで違う笑顔だった。
「命は賭ける予定だが死なねえよ。……お前と仲良くしてくれって、真咲に頼まれてるからな」
 思いがけず出てきた従姉妹の名、そして何故自分と『仲良く』することが一心が死なないことに繋がるのか理解できず、思わず眉をひそめる。
「……初耳だが」
「二十年近く俺の名前呼ぼうとしなかった奴にそんなこと言えるわけねえだろ……じゃあな、本当に帰るぞ。そろそろ午後の診療が始まっちまう」
 一心はひらひら手を振って、ドアをすり抜けて院長室から出て行った。
 邪魔をするだけして、一体なんだというのだ。竜弦は一つ溜息を吐いて、仕事を再開した。
 あの男が去り際に見せた無遠慮な笑顔。それを見て少なからず安心している自分に気付いたが、思いの外悪い気はしなかった。

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【2021.08.06】週末のスタミュオンリーについてのお知らせ

直前になりますが8月8日のスタミュオンラインオンリーの詳細のお知らせです!!

スペースは【お6】となっています。ちあふゆスペです。

お品書き

新刊本文サンプルはこちら

当日は当方のBoothにて頒布を行います。
また、ネットプリントでの無配も予定していますが、こちらはお品書きにネップリの番号を載せてスペース内のお品書きに掲載します。
(一応サイトでも公開予定)

当日のお越しをお待ちしております!

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【2020.08.29】新刊の表紙が出来ました+お品書き

新刊のお知らせ

もう開催日前日ですが新刊が表紙含めて完成したのでお知らせ致します。

新刊について詳しくはこちら。
【ちあふゆ】0830エアブー新刊本文サンプル

こちらエアブー用に作成したお品書きになります。

人間やろうと思えば一ヶ月以内で本出せるものなんですね……流石にこんな強行もうやらないと思いますが。

それではエアブーにてお待ちしております。
もちろんエアブー強化期間終了後も通販は受け付けていますので、お気軽に通販をご利用いただければと思います。

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【2020.07.23】本についての話

発行から三ヶ月経ちましたので、こちらの本に収録した各作品について少しばかりネタバレ込みの話をしようと思います。
まだ読んでいないという方は、是非こちらの本をお読みになった上でこの記事を読んでください。

サンプルページ
サークル:熱帯雨林
書名:INTERSECTION
Booth:https://rainfforest.booth.pm/items/1952065

タイトルの話

書名「INTERSECTION」は、英語で「交差点」という意味になります。
二人の通る道が交差する時間を切り取った作品を、という気持ちで付けました。
ちなみに初期の仮タイトルは「album」でした。これはこれでいつかどこかで使いたい。

仕様の話

まずサイズについて。
初めての同人誌は絶対に文庫サイズで出したかったので文庫サイズにしました。文庫サイズの小説同人誌というものに昔から憧れがあったのです。

奥付にも記載しましたが、表紙と裏表紙の写真は自分で撮って自分で加工して作りました。
表紙の写真については色味をちょっといじった程度ですが。
表紙の写真は2019年の3月撮影で、3期放送開始前に個人的に趣味で撮っていた写真をそのまま使った形になります。撮影場所は永田町の近くで、某声優さんのイベントに行ったついでに撮ってきました。
裏表紙は、こちらの元写真を加工したものになります。(撮影は2019年2月)

某アイドルのリリイベでよみうりランドに行った際、イルミネーションが綺麗なところに偶然雪が降ってきたのでこれは良い資料と大量に写真を撮ったうちの一枚です。
雪とイルミネーションの色の取り合わせが、ちあふゆにちょうどよかったんです。

収録作品の話

基本的に一話一話の文字数が少なめなのでそれなりの本数を集めないと本として見栄えがしないなあと思ったのと、せっかく初めての同人誌なんだし詰め込めるだけ詰め込んでしまえと作業をしていました。
結果的に本文だけで5万字近く144ページになりました。
再録作品については、原稿作成時の己の解釈とのぶれが比較的少ないものを中心に選びました。
書き下ろしはサイト掲載分では扱わなかったような方向で少し遊んでみたりしました。

以下、収録作品それぞれについて。

あの日の続きを

再録。最初に書いたちあふゆとその続編ということで、これは絶対に入れようと思い収録しました。再録分の中でも一番加筆修正が少ないと思います。
作業しながらずっとKalafinaの「夏の林檎」をイメソンとして聞いていました。

手は口程に

再録。個人的に風邪ネタは全推しカプでこなしたいノルマ。サイト掲載版だと終わり方がちょっとあっさりしすぎている気がしたので、再録時に結構がっつり加筆しました。

星に祈れど

書き下ろし。初めての同人誌で受けにも攻めにも風邪を引かせようと思う程度には風邪ネタが好きです。冬沢視点の風邪で弱ってる千秋の描写をちょっと頑張りました。

Nothing but YOU

再録。元々は押し倒される・流される・キレる・説教する・許すまでの切り替えがめちゃめちゃに早い亮を書きたいなあと思って書き始めた話でした。お互い最初から相手のことしか見てないからそういうことになる、きっと。
イメソンはタイトルそのまま、アイドルマスターシンデレラガールズより「Nothing but You」(NEX-US)です。

とある個室居酒屋にて

再録。収録分ではちあふゆ以外の人が直接出てくる唯一の話。この話の入夏はかなり気に入っています。酒に酔ってるんだけど貴史に迎えに来てもらうまで完全に確信犯でやってる亮のイメージ。

雪解け近し

書き下ろし。電車通学と言えば電車遅延と全線運転見合わせですよね。
元々は初雪が降り積もって電車が止まるというプロットを考えていたんですが、いくら首都圏の路線でも初雪レベルで電車が止まるほど脆弱じゃないぞと思いとどまり信号故障を原因にしました。
雪は降ってきたけどそれをきっかけに二人の仲は少しずつ雪解けが近付いている、そんな話。

ふたりだけマスカレード

再録。元々は亮の誕生日ネタでした。互いの仮面を剥がしてやろうと目論んでいるような二人を書くのが楽しかった記憶。
タイトルは元々横文字だったのですが、本に掲載するにあたって文字数の多い英単語は縦書きだとちょっと厳しいぞ思ってこっそり日本語に改題しました。

シリウスへの帰郷宣言とその回想

書き下ろし。成人後のネタが多い本だけど幼少期メインの話が一本くらいあってもいいんじゃないか?と思って書きました。完成が締め切りぎりぎりだったので、本に載るかどうか最後まで分かりませんでした。載せることが出来て良かったです。
ショタとショタのおねショタ概念みたいな幼少期ちあふゆの気配をドラマCDから察知したので、そんな感じの二人は今後も書いてみたいです。
ちあふゆに宇宙人ネタ絡めようと思ったのは年始にウルトラマンのイベントに行ったのがきっかけでした。SFパロとか特撮俳優になった貴史メインの話とかうっすら考えてたんですが、本を出す予定だったイベントが4月開催だったのでエイプリルフールと絡めることでこんな形になりました。
ちなみに亮が帰郷宣言をした星は最終的にシリウスに(冬の星、太陽の次に明るい恒星ということで)決定しましたが、候補は他にも色々ありました。冥王星とかフォーマルハウトとか。最終的に完成した話の雰囲気を考えるとシリウスにしておいて正解でした。
イメソンというか書いてる時はずっと最近のウルトラシリーズのED曲を聞いていました。佐咲紗花「ヒトツボシ」・三森すずこ「夢飛行」など。

まほうのじかん

書き下ろし。なんでもない時間のなんでもないけど二人にとっては大事な会話を切り取りました。
イメソンは内田真礼「magic hour」。

PM0531、特別な平凡を君に

書き下ろし。冬の遊園地デートです。捻くれに捻くれた二人だからこそ真っ直ぐに素直にデートしているところを書きたいと思って書きました。
場所のイメージは冬のよみうりランドです。裏表紙の写真を撮った時に「こんな感じの場所を自カプがデートする話書きたいなあ」とか思っていたのですが、当時の写真が資料として大いに役に立ってくれました。表紙の写真もそうですが撮影が2019年前半なのでちあふゆどころか3期放送前です。(名前と線画だけなら公式FCのイベントで見てたんですけどそれ以上の情報はなかったのでまさか推しカプになるとは思ってもいませんでした)
ちなみにこの話に限らず収録作品の半分近くの季節設定が冬なのですが、これは原稿やってる時期が真冬だったからというのが大きいです。あと冬ってどうしても物寂しいイメージがありがちだし創作物全般でも冬と恋愛の取り合わせって失恋系になりがちなので、それを自分の中でどうにか吹っ切りたいという思いも強いです。皆もっと真冬に浮かれた恋しろ。
イメソンはμ’s「Snow haletion」・水瀬いのり「Winter Wonder Wander」。

engage

再録。ここ数年エロを全く書かない文字書きと化していますが私の中の二人はちゃんとやることやってます。
亮がスマートスピーカーの音声苦手なのは私の勝手なイメージ。苦手じゃなかったら多分使いこなすタイプ。

「あの日の続きを」で初めて「engage」で〆る構成は収録作品の数がある程度揃った頃に決定しました。
その間の収録順は、じわじわ作品の糖度を上げていくようなイメージで順番決めをしました。あと雰囲気の近い作品をなるべく前後にしたりとか。

本を作るのは初めてな上に入稿までのすべての作業を一人でやったので大変でしたが、楽しかったです。
締切には追われたくないけどまた本を作りたいですね。
今年度中はイベントに出る予定はないですが、本を作ったらまたサイトで告知します。

それでは今回はここまでとなります。
皆様健康にはお気をつけて。

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表層と深層(ちあふゆ)

 俺はいつか怪物になるのかもなあ、なんて漠然と思いながら今日も妹弟達の分の朝食を作るためにフライパンを振るう。
「お兄ちゃん、今日はぴこにゃんのお弁当にしてみるね」
「おうありがとな、ただそろそろキャラ弁は勘弁してくれ」
「ええー、可愛いからいいでしょ」
 軽く火を通したアスパラガスとベーコンの上から人数分の卵を割り落とす。じゅうじゅうと油のはねる音を聞きながら夕べのうちに切っておいた林檎や柿を大皿に並べ、食卓へ持って行く。
 四季の首を切り落とす真似を亮の目の前でやってもなお、それとは一切関係なく長男としての俺の日常は回る。
 俺は家族全員分の朝食を作らねばならないし、妹が作る弁当は昨日も今日も可愛いらしいキャラ弁だ。
 俺は亮がどれほど四季からの視線を望んでいるのか知っている。それをずっと間近で見ていた。亮が四季から一人のライバルとして見て欲しい事を熱望してもそれが叶わず人知れず苦しみ、それが華桜会として選ばれた事で表に出たから今回の事態に発展したという事も。それを知っているからギロチンの刃を落とした。明らかに暴走している亮ではなく、四季に向けて。
 それであいつの何かが変わると、変わるきっかけになればいいと、亮の意思すら無視した曖昧な理由で。そして、亮の中に俺を刻み込んでしまえればいいと、極めて利己的な理由で。例えそのギロチンの刃が亮に刺さっていたとしても、その傷が俺が亮を見ていた証明になるのならばと。
「お兄ちゃん、卵焦げてるよ」
「おっと」
 コンロの火を止め、ベーコンエッグとアスパラガスを皿によそったら茶碗にご飯をついでいく。
 自分の事は自分が一番理解している。遅かれ早かれ俺はいずれ爆発していた。俺を見ろといくら声無き声で叫んでも届かなかった声を押し殺し続けて心の奥底で膿んで蓄積し続けたそれが、今回の件できっかけを与えられて爆発したのだ。
 だがそれは不思議なほど清々しくて、その清々しさを自覚した時、俺はもう駄目かもな、とも思った。
 自分にまともに見ようとしない幼馴染の視線を自分に向けさせる為に四季を人身御供にした事に清々しさを感じてしまう人間の何が真っ当なのか。亮なんかより俺の方が余程修正不可能だ。
 ああ、だがそれがなんだって言うんだ。
 俺はとっくに自分がいるべき場所を決めてしまった後なのだから。それを邪魔するのであれば俺は恐らく誰であろうと手に掛けてしまえる。
 後ろめたさなど、己がこれから見ようとしている物と比べれば些細な物に過ぎなかった。
 今の俺が見たいのは、見るべきなのは、あいつの行く先であって、それは今でなければ見られない物なのだから。
「お兄ちゃん、お弁当出来たよー」
「おう。こっちも朝メシ出来たからあいつら起こしてくるわ」
「うん」
 まだ寝ているであろう弟達を起こしに、台所を出て階段を上がり、ミュージカルで鍛えた声を張り上げる。
「お前ら起きろー!遅刻しても知らねえからな!」
 長男としての日常を生きていてもなお、思考の内は苦しいほどに亮の事で満たされている。温かな筈の日常と、酷く冷たく暗い心の内の温度差に度々気が狂いそうになる。
 だがそれでも、そのせいで俺が怪物に変わるのであればそれでもいいじゃないか。俺は俺の選択をもう後悔出来ない所まで来ているのだから。後悔などする資格もない。であれば後悔する意味も理由もない。亮のためを騙って己の為に他を蹂躙してやろう。それであいつが少しでも変われるのであれば。またあの頃のように踊れるようになるのなら。それは充分、安い買い物だ。

 ……それでもお前が止まれないのなら。
 俺は今度こそ、お前と一緒に死んでやる。

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作業中BGM
『signal』Kalafina
『red moon』Kalafina
『ジョバイロ』ポルノグラフィティ

この幻覚を十二幕放送までに書かなかったら永遠に書けなくなる恐れがある事に気付いたので書きました(十一幕放送翌日)

【2018.12.15】作品の話と雑記

作品の話

「チャドの乱舞イベ周回すんの疲れたから全部の育成終わったら雨竜がチャドにキレ散らかす話書こう!」と思って本当に書いたら明日からの乱舞イベ雨竜復刻らしいですね。
ローテ的に何となくそんな気はしていたがほんとすいませんでした。
今FGOで鬼周回してるとこだから勘弁してください。

雑記

クリスマスが近いですがクリスマスネタは特に書く予定がありません。
そもそもクリスマスの空気が昔から私の書きたい作風といまいち相性が良くないのが主な理由です。ハロウィンの方が好きだしクリスマスネタ書いてるCPはとてもレア。確か1本はこっちに持ってきてる筈。
でも雨竜にクリスマスプレゼント渡そうとして行ったり来たりする竜弦は考えてみたい気持ちありますね……。

そういえばFGOの始皇帝が凄く好みのキャラだったので近々何か書きたいです。
不老不死異形美形メンタル激強メスお姉さんCV○山潤、最高です。

最近やたら寒さが厳しいですが、皆様風邪やインフルエンザにはお気を付けてー。

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【1106】ただ一度の夜に

 11/05 23:27。
 携帯電話の液晶に表示されている数字を見て、雨竜は溜息を吐き出した。
 もう何度目になるか分からない極めて浅い眠りと覚醒を繰り返した挙句、雨竜は眠るのを諦めてベッドの上で大の字になった。
 そこまで寝付きが悪い自覚は無いが、どういう訳か今日は全く寝付く事が出来なかった。何か気が逸っているとか、興奮しているだとか、そういう事はなく。ただ、眠れないのだった。
 夕方に珍しく飲んだコーヒーのカフェインが変に強く効いてしまっているのかもしれない、と検討は付けてみるものの、それでどうにかなると言う訳では無い。
 カーテンの隙間から月明かりが薄く差し込む部屋の電気は付けずに、ぼんやりとベッドの上で天井を見詰める。
 ──明日の授業は何限からだったっけ。3限か。じゃあ多少遅くまで寝ても大丈夫か。
 ──他に予定は……ああそうだ、夜に竜弦に呼ばれてた。何でだっけ……。
 明日は何の日だったか、と少し考えた後。
 ──そうか。僕の誕生日か。
 どこか他人事のように思ってから、苦笑する。
 ──誕生日の前の夜に眠れないなんて、まるで子供じゃないか。
 あと30分もすれば、法律上「子供」ではなくなるというのに。あと1、2年もすれば18歳から成人として扱われるらしいが、そんな事は今はどうでもよく。
 ふと、少し散歩でもして体を動かそうか、と思い付く。そうすれば少しは眠れるかもしれない。それに、「子供」でいられる最後の時間を、夜の散歩をして過ごすのは奇妙に魅力的に思えて。
 夜に出歩く事自体は虚退治でよくあるし慣れているのだが、理由も無く夜の町を歩く事は滅多に無い。少しだけ悪い事をするような不可思議なスリルに心惹かれ、雨竜はベッドから体を起こした。
 パジャマから外を出歩ける程度の恰好に着替え、携帯電話と鍵だけを持つと雨竜はスニーカーを履いて静かにアパートの外へ出た。
 少し冷えた空気に包まれた静かな住宅街は虫の鳴き声以外の音は無く、虚の気配も無い。車くらいは走っているだろうと思っただけに、想像以上の静けさを意外に思いながら、雨竜は街灯の少ない道を歩く。
 パーカーでは少し寒かったか、と思いつつパーカーのファスナーを一番上まで上げた。吐く息は薄く白を帯びており、冬が近付いているのを感じる。
 11月、という月は秋から冬への過渡期だからか秋と言うには寒すぎて、けれど冬と言うには暖かい。暑いよりは寒い方が得意なので嫌いではないが、街路樹の葉が薄くなっていくのを見るといつも少しだけ物悲しくなる。もっとも、今住んでいる辺りの道には街路樹など植わっていないのだが。
 なんとなく、近所の公園まで足を運ぶ。ぼんやりと時計盤が光るモニュメントクロック、砂場、申し訳程度の遊具ととベンチくらいしか無い公園だが、日中であれば子供達が駆け回っている。しかし今は時たま居る不良グループの姿もなく、僅かな街灯にほのかに照らされるだけで静まり返っていた。
 みゃあ、と猫の鳴き声がしたので声の方向を振り向くと、闇に溶け込むようにして黒猫がベンチに座ってこちらを見ていた。銀色の双眸が夜の中に浮かび上がっている。
「夜一さん……ではないか」
 声が出かけるが、四楓院夜一の金色の目は黒猫に変化していても健在である事を思い出し、野良猫だろうとすぐに検討を付ける。
 近付いても猫は逃げる様子もなく、ふわりと大きく欠伸をするだけ。
 ──触ってもいいかな。
 普段であれば野良猫に触る事は無いのだが、夜の散歩に奇妙に高揚した心がそんな気を起こさせ、黒猫の隣に座る。
「ええと……撫でてみても?」
 一応聞いてみると、黒猫は尻尾をぱたぱたと動かした。承諾を得た、と思っていいのだろうか。雨竜は恐る恐る丸まった黒猫の背中を撫でてみる。黒猫は逃げることなく、目を閉じるのみ。
 ふわふわとした手触りと毛皮越しに感じる体温。自分が今撫でているのは生き物なのだという実感に、ふとむず痒くなるような熱くなるような感覚が胸の内に広がる。
「……君は逃げないんだね。人には慣れているのかな」
 ネコに餌をあげないでください、というあちこちの看板にもお構い無しで野良猫に餌をあげる人はいる。もしかしたら自分もその手合いだと思われているのかもしれない。
「ごめん、餌は持ってないんだ」
 謝りながら、猫の喜びそうな所を優しく撫でると、ごろごろ喉を鳴らした。可愛い。今度猫をデザインに取り入れた小物でも作ってみよう。
「……何をしている?」
「…………」
 この状況を一番見られたくない相手の声が聞こえて来た気がする。
 いや、多分気の所為だ……と思いたくとも、発達した霊圧知覚が気の所為では無い事を告げてくる。
 恐る恐る顔を上げる。気の所為では勿論なかった。夜の公園にぼんやり白く浮かび上がるように、ベンチから2mほど離れた所に男が1人立っている。今日はスーツの上から薄手のコートを羽織っているようだ。その名前が、引き攣った喉から辛うじて出て来た。
「……竜弦……」
「父親の名を呼び捨てにするなと……」
 はあ、と呆れたように溜息を吐き出してから竜弦は雨竜の顔と黒猫を交互に見た。
「質問を変えよう。こんな時間に、何をしている」
「……そんな事を言うために出て来たのか?」
「生憎、『まだ』お前は子供だ」
 竜弦が視線を公園の中心に立つ時計に向ける。時刻はアナログ盤で11時45分を指していた。
「子供が夜に1人で出歩くのを親が咎める事に何か問題でも?」
「だからってそれくらいで……いや、もういい」
 この父なら「それくらい」の事を言う為だけに出て来かねない。それはよく分かっている。
「……散歩だよ。眠れないんでね」
 黒猫から手を離すと、ぐいぐいと太股に顔を押し付けられた。懐かれてしまったようだ。竜弦はそれを見て眉を顰め、何か言いたそうにしたがそれは溜息となって表に出て来た。
「……眠れない、というのは?」
「別にどこか悪い訳じゃ無い。これで体か魂魄に異常を感じてたら散歩の前にあんたか浦原さんに電話してる。だいたいそういうのは僕よりあんたの方が気付きが早いくらいだろう」
 僕の霊圧は常時捕捉している癖に、と少しだけ言外に皮肉を込める。黒猫が膝に乗ってきたので、再度背中を撫でる。
「だいたい僕はもう子供じゃなくなるんだし自分の身は自分で守れる」
「どうだかな。少なくとも2度は守れていなかったと記憶しているが」
 すげなくそう返され、自分の身を守り切れずに竜弦に助けられた事が複数回ある雨竜はむっとしながら言葉を返す。
「あの時よりは強くなってる」
「さてどうだか──」
 竜弦が言葉を言い終える前に、ズドン、と砲撃にも似た重低音がと甲高い悲鳴夜の街に響いた。
 普通の人間には聞こえない音を聞いても尚、竜弦は涼しい顔をしている。その左手にはいつの間にか銀色の短い霊弓が握られ、その弓を真っ直ぐ真横へと向けており。雨竜もまた、右手に持った細弧雀を真っ直ぐ真横へ向けていた。
 音も無く2人に忍び寄った虚を、2人が一瞬の内に滅却させたのだ。
 雨竜の膝の上の黒猫は意に介せず微睡んでいる。
「……僕の方が早かった」
「馬鹿を言うな。射速は私の方が上だ」
「反応は僕の方が早い」
「青二才が私に張り合う気か?」
「そっちこそ体力が霊力について来なくなってるんじゃないか?」
「……言うようになったな」
「あんたから伝染ったんだろ」
 雨竜の言葉に竜弦は少しだけ苦い顔になった。自分の言葉が辛辣だという自覚があるなら僕相手の時くらいはやめればいいのに、と思いながら雨竜はまた猫を撫で始めた。
「……自分の身くらい自分で守れる」
 もう一度呟くように言うと、竜弦は渋々と言った様子で頷いた。
「……そのようだな」
 おや、と思って僅かに首を傾げると、竜弦が腕時計を見た。雨竜も釣られて公園の時計を見ると、2本の針は12を指そうとしていた。
 竜弦は何か意を決したように、雨竜に1歩近付いた。
「雨竜、一度しか言わないから聞け」
「何」
「……11年前の6月、私はお前が無事に成人を迎える事、あるいはそれを私自身が見届ける事は半ば絶望視していた」
 雨竜は目を見開いた。父が1人で重い物を背負い続けてきた事は知っている。だが、初めから始祖に対して確実に勝ちに行くつもりで自身の存在と切り札を隠し続けていたのだと思っていたばかりに、その告白は鈍器で頭を殴られたかのような衝撃だった。
「お前を死なせるくらいなら私が死ぬ、そのつもりでいた。誰が止めようとユーハバッハは刺し違えてでも殺す、と。……まさか、2人共が生き延びるとはな。どう転がるか分からんものだ」
「……そうだな」
 雨竜もまた、あの戦いで死を覚悟していた。それでも、自分を繋ぎ止めてくれたものが確かにあったからここに居る。そして父を繋ぎ止めようとした者も確かにいたのだろう、そう思って浮かんだのはあの日父の隣に立っていた死覇装だった。
 竜弦の言葉の重みを噛み締めていると、膝の上で黒猫が微睡みから目を覚ました。二、三度頭を撫でると、黒猫は雨竜の手の下をすり抜けてひらりとベンチから飛び降り、夜の静寂へと消えていった。
 竜弦はそれを目で追い掛け、どこかへ消えたのを見届けてから口を開いた。
「雨竜、お前が今生きているのは私が考えもしなかった時間だ。お前は私が何もしなくとも勝手に各所で縁を結び、勝手に強くなり、勝手に成長した。……それで良かったと、今は思う」
「……え……」
 自分は今、何か凄い事を、これまで1度も言われなかった事を父に言われている、言われようとしているのでは。そんな予感に、勝手に鼓動が早くなる。
 竜弦は雨竜の緊張など露知らず、ふっと表情を緩めた。
「お前が生まれて来た事、そして20年生きてくれた事。それだけで私には僥倖だ」
 何故だろう、父の声が少しだけ泣きそうに聞こえて来るのは。自分にとって圧倒的な強さと冷厳さの象徴である筈の父が、見た事も無い顔をして、聞いた事も無い事を語っている。
「……誕生日おめでとう、雨竜。生まれて来てくれて、生きてくれて、ありがとう」
 普段の父からは想像もつかない程穏やかな父の表情に、声にしばし呆気に取られたのち、雨竜ははっとして時計を見た。短針と長針は重なり合って天を向いていた。
 ──もしかしてこの人。
 ──本当は僕にこれを言うためにわざわざこんな時間に出て来たのでは……?
 照れと少しの嬉しさと困惑が綯い交ぜになり、顔がどんどん熱くなる。
 だが直ぐに、不思議なおかしさが込み上げて来た。なんて素直じゃないんだろう、と。
「……そんな事いちいちあんたに言われなくても、僕は今まで通り勝手に生きてやるよ」
 条件反射的に憎まれ口を叩いてしまうのが自分でも少しだけ口惜しい。
「でも……うん、ありがとう」
 それでも比較的素直に正直に感謝の言葉は言えるようになった。
「……ありがとう。僕の事を守ってくれて」
「私はお前を守る程の事はしていない」
「それでも僕を死なせない為に色々してきたんだろ。それを守ったって言うんだよ」
 やり方はどうかと思わなくもない点は数あるが。それでもこの不器用な父親は、息子である自分を守る為に戦っていたのだ。
 そのお陰もあるから、今ここにいる。
 竜弦小さく「そうか」と呟き、腕時計を見た。
「……そろそろ帰れ。明日も大学だろう」
「そうする」
「ああ、それと」
 ついでのように、竜弦はコートのポケットから小さな箱を取り出した。
「手を出せ」
「?」
 言われるままに手を出すと、布張りの箱が掌に置かれた。
「帰ってから開けろ」
「あ、ああ……ありがとう」
 誕生日プレゼントという事だろうか。何となく関係が改善してから毎年何かは貰っているのだが、流石に日付が変わった直後に渡されるのは初めてである。
「では、18時30分に病院前。忘れるな」
「分かってる。また後で」
 竜弦はくるりと踵を返し、瞬きをする間にどこかへ消えていった。飛簾脚でも使ったのだろう。
 僕も帰ろう、と雨竜はベンチから立ち上がると、元来た道を来た時のようにゆっくり戻って行った。

***

「な……なん……?!」
 帰宅後。照明の下で竜弦から渡された箱を見た雨竜は絶句していた。
 箱には、誰でも知っているような海外の超高級腕時計ブランドのロゴマークが箔押しされていたのだ。
 ──嘘だろ。
 ──こんなどう見たって高い物、あんな無造作にポケットに入れて深夜の公園で渡してくる奴があるか……?!
 震える手で箱を開ける。そこには、銀色に輝く1本の腕時計が収められていた。保証書も収められており、無論、どこからどう見ても新品。
 ひどい目眩を覚え、雨竜はこめかみを押さえた。
 誕生日に高級腕時計をくれるのは、まだ良い。もっと渡し方と場所を考えろ、と叫び出したい気分だった。
 夜会った時に絶対文句を言ってやろう。……まあ、それはそれとして、会いに行く時に一応着けて行ってやらなくもない。持っている服の合計額よりこの腕時計1つの方が高そうだが。
 なんだかどっと疲れて、雨竜はなんとかパジャマに着替えてベッドに倒れ込んだ。
 確かに、眠れない夜の散歩の効果は絶大だった。まさか最終的にこんな形で疲れる羽目になるとは思いもしなかったが。
 もうここから先は起きてから考えよう。
 雨竜は目を閉じ、あっさりと意識を手放す事に成功したのだった。

 ……そして、それからおよそ18時間後。
 父によって高級テーラーに連れて行かれた雨竜は再度絶句する事になるのだが、それはまた別の話。

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今日(2018年11月6日)が完結から2年経ってからの誕生日なので、もうこれは成人ネタで書くしかない……と思いました。
彼には健やかに素敵な大人になってほしいです。
それにしても原作完結済なのに今年は石田周りがあまりに怒涛だった気がしなくもないです。

カルデア小話「よくある話」

「おっ、オルタちゃん支部更新してるじゃーん」
 刑部姫はいつものように自室のコタツでぬくぬくと、ネットサーフィンがてらサーヴァント専用イラストSNS・TMixivを眺めていた。
 『二次創作ログ』というシンプルなタイトルのページを開く。更新主であるジャンヌ・オルタは、その繊細ながら勢いを感じさせる絵柄や幅広い漫画の作風から、つい最近TMixivを始めたにも関わらず人気絵師の一人である。
 刑部姫とてTMixiv古参とはいえ、彼女が熱意を持って初めての同人活動に挑んでいた事はよく知っているし、サバフェスが終わってからもこうして同人活動を続けてくれる事は嬉しく思っていた。
 オルタちゃん絵上手いしネタも面白いんだよねー、と刑部姫はウキウキとページを開き……数分後、顔を覆いながら呟いた。
「……ジュナカル以外全部逆カプ……」

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彦星についてのエトセトラ(廉聖)

「彦星の野郎牛車持ってんなら七夕にかこつけず自力で天の川渡ってみやがれってんだ、お前もそう思うだろ聖」
「は?」
 土曜日だからと北原の期末テストの勉強の面倒を見てやっていたら急に意味不明な事を言い出した。
 正直北原が何を言いたいのか特に理解する気もない南條は、適当に首肯する。
「うん、まあ、廉がそう思うならそれでもいいんじゃない?」
「なんだその適当な返事は、有罪だ」
「廉が勉強途中で急に意味不明な事言い出すのが悪いんですけど?」
「今日は七夕だからな、昔から思ってた事を言っただけだ」
 わし座のアルタイル。彦星──牽牛星。牛車の図案で表されるそれを見てそう思ったのだろうか、と南條は何となく当たりを付ける。しかし牛車があるなら川を自力で渡れ、というのはどんないちゃもんの付け方だろう。そもそも牛車で渡れる程度の川なら大した恋の障害にはならないのでは、とも思う。
「……ま、昔から想像力豊かなのはよろしいし、牛車なんて廉が知ってたのも驚きだけど。今は勉強しようか?廉、今度のテストの範囲やばいって言ってたよね?」
「いちいち一言多いぞ聖」
 北原は不服そうな顔をして、シャーペンを手の上でくるくると回す。そしてすぐにニヤリと笑った。
「まあ安心しろ、オレが彦星だったら天の川くらい泳いで渡ってやる。出不精なお前の分まで頑張ってお前に会いに行ってやるよ」
「……なんでこの流れで俺のこと口説こうとしてるわけ?」
「は?今のどこが口説きだ」
「うっわ……」
 無自覚とか、よっぽど有罪だと思うんですけど。
 南條は勝手に熱くなってきた顔を天井に向けた。

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北原が雑にイメージしているのは沖縄の離島などで観光資源として行われている水牛の牛車のやつです。

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