カテゴリー: ウルトラ

アクセス・フラッシュ!(メビウスとヒカリ)

※グリッドマンネタ

「プライマルアクセプター……いいな!」
「急に何を受信したのヒカリ!?」

「……というわけで、プライマルアクセプターの試作品を作ってみた」
「受信から行動までが早すぎる……」
 宇宙科学技術局、ウルトラマンヒカリの研究ラボ。作業台の上に広げられたブレスレット型のアイテムを見てメビウスはげんなりと呟いた。
「確かに同社だけどこれはウルトラマン向けのアイテムじゃないよ……」
 ヒカリが開発したプライマルアクセプターの試作品、プライマルアクセプターという名を冠するだけあり、プライマルアクセプターそのままであった。そう、かのアニメに登場した変身アイテムそのままのデザイン・形状・色彩。大人向けレプリカ系玩具として今すぐ売り出せそうである。
「何を言う、ちゃんとウルトラマン向けの調整はするさ。俺がしたいのは、このアクセプターの機能のウルトラマンに向けた形での最適化だ」
「機能……最適化?」
「お前も昔やったことあるだろう、電脳空間内に自分のデータを送り込んでその中で怪獣との戦闘」
「うん」
「電脳空間内への転送機能はメビウスブレスにたまたま備わっていたからいいものの、全ての変身用アイテムに備わっているわけではない。変身アイテムを使用しない者もいる。そこでこのプライマルアクセプター」
 ヒカリはアクセプターを自分の顔の前に掲げた。
「宇宙警備隊員達が安全かつ確実に電脳空間内で戦闘出来るよう、今後これが必要になる時が来るのではないかと俺は思う」
「はあ……」
 ヒカリがそう言うならそうなのかもしれない。そんな気がしてくるメビウスだったが、ヒカリの押しの強さは並大抵のそれではないことを思い出す。そしてここで自分がこの驚きの押しの強さに負けてしまうと誰もヒカリを止められなくなるのだ。そう、ゾフィー隊長ですら。ヒカリが暴走した時最後に(物理的に)止められるのはウルトラの父だとかウルトラマンキングだとかそういうポジションの方々になってしまう。
 つまり自分が最後の砦なのだ、そうメビウスは自覚していた。
「いや、そうだね、そうだけどヒカリ……」
「なんだメビウス」
「せめてデザインは変えようよ……」

 こうしてヒカリによる『プライマルアクセプター配備計画』は『ウルトラランス電子変換機能搭載計画』へと形を変えることになるのだが、それを知っている者はメビウスとヒカリのみである。

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真冬HEAT(ゼロ師弟)

「今夜はパリパリナイッスよゼロ師匠!!!!!!!!」
「うわどうした急に!」
 ゼロの部屋に突如押しかけてきたゼットは、白いファーがあしらわれた真っ赤な服を着て巨大な白いずた袋を担いでいた。「地球では今頃クリスマスというお祭りだとハルキから伺いまして!」
「よし帰れ、ろくな予感がしないから今すぐ帰れ」
「何ッスか師匠!ヒドイ!」
 グイグイと部屋に乗り込もうとするゼットを押し返すゼロ。ゼットは抵抗したが力ではやはりゼロの方が上である。
「俺はもうサンタなんて信じるような歳じゃねーんだよ!」
「何の話ッスか!」
「うるせえ!クリスマスに俺にプレゼントをくれたサンタの正体はアストラだと親父から聞かされた時の俺の気持ちがおめーに分かんのか!?」
「なんかゼロ師匠が心にトラウマを抱えてる事だけは分かりました!」

 今日もゼロの周りは(主にゼット一人が)賑やかである。

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はたなかさんの真冬HEATっていう曲、Z後期EDのカップリングなんですけど良い曲なので聞いてください。パラパラクリスマスソングです。パラパラクリスマスソングって何?

ソラちゃんはかわいい(ヒカリとソラ)

※ウルフェス2018のステージのストーリー前提。ソラがリブットと一緒にGRFに転属する前

「君の研究とこの試作品、原理は画期的で非常に素晴らしい物だが……汎用性には少々欠けていると言わざるを得ない」
「ええ、分かってます。歌いながら戦うウルトラマンなんて、そうそういませんよね」
 上司であるウルトラマンヒカリの言葉を、私は仕方がないと受け止めた。
 歌声をエネルギーに変換する。それが私の長らくの研究だった。それは一度確かに効果を発揮してウルトラマン達の力になったのだが、この装置は歌唱者が直接操作しないとならない。
 つまり、ウルトラマンが戦う時のエネルギーにするには、戦うウルトラマンが直接歌うか、歌唱者が戦場に居なければならない。それ以外に転用するにしても、歌唱者がずっと歌っていないと持続的にエネルギーを発する事は出来ず、まあ発電装置とかそういう物への転用も難がある。
 そう言った点を総括して汎用性に欠ける、とヒカリ博士は評したのだ。
「だが決して役に立たない訳では無い。これまで行われてきた音をエネルギーに変換する研究の中では、君のこれは確実に最先端を行っている。素晴らしいと思うよ」
「ありがとうございます、ヒカリ博士」
「しかし、君自らこの装置の試験台になるとは驚いた。君の歌の上手さにもね」
「そう……ですね。歌には少し、自信が」
 私が人に誇れるようなものなんて、歌くらいだけれど。
「……昔、幼馴染が褒めてくれたんです」
 私は私の歌声は誇っていいのだと教えてくれた人がいるから、私は私の歌を、誇りに思えるのだ。
 願わくばこれが彼の力になればいいな、なんて。

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diver(R/B、イサミ)

 地球からほんのひとっ飛び。
 軽い力で地面を蹴れば、ウルトラマンの力であっという間に大気圏を飛び出して、体ひとつで宇宙の中に飛び込める。
 デブリを掻き分けるようにしてもっともっと深く潜れば、頭のてっぺんからつま先まで、心地よい静寂と、上も下もない暗闇の中を遠くから届く星々の瞬きで俺の世界が満たされていく。ダイビングってこんな感じなのかな、やったことないけど。
 小さい頃はただ天体望遠鏡越しに見上げるだけだった星にだって、この力があれば手が届く。火星に本当に水があるのかも、実はそんなに綺麗じゃないらしい木星も、土星の環も、今ならきっと簡単に見に行ける。太陽系の外まで飛び出してみれば宇宙の果てを旅しているボイジャー1号にも会えるのかな? 会ってみたいな。
 もっと深くまで行けるものなら行ってみたい、好奇心の赴くままに進もうとすると、俺を呼ぶ声がした。
「イサミ!」
 振り向くと、地球から追いかけて来たらしいカツ兄が真っ直ぐこちらに向かって来て、俺の手首を掴んだ。ぐい、と手を引かれる。
「ほら、そろそろ帰るぞ。なかなか戻って来ないと思ったら……」
 口調こそ怒り気味だけど、その顔には少しだけ焦りが浮かんでいる。ちょっと悪いことしたかな。
「ごめーん」
「全くしょうがないやつだな……」
 でもカツ兄は、謝れば許してくれる。まったく、優しすぎだっつの。
 カツ兄に引っ張られて、地球まで引き上げられる。さっきまで俺が潜っていた宇宙と比べたら、地球の青はずっと明るかった。地球自体が明るい光を放っているようだ。地球は恒星じゃないのにね。地球の青が眼前に近づくにつれ、俺はもう一度後ろを振り返った。
 どこまでも広がる、どこまでも潜っていけそうな宇宙がそこにはあって。でもどことなく、今の俺は宇宙に潜って行くにはまだ早すぎるんだろうな、という気がした。
 行くのは簡単かもだけど、戻って来るのは大変かも。それこそ今みたいに、カツ兄がいなきゃ戻れないかもしれない。

 ──また今度な!
 
 宇宙に潜るのは、もう少し強くなってから。その時はカツ兄も一緒がいいかな。
 宇宙に一つ手を振って、俺は今度こそ地球の青に飛び込んで行った。

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

イサミは好奇心の強さと行動力に対してブレーキがぶっ壊れてる印象があるのでR/Bだとカツ兄がストッパーになれてるけど他のシリーズ(特に平成)に生まれてたら結構危なっかしいことになってそうという勝手なイメージがあります。
イサミがR/Bのキャラでよかった。

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プロフェッショナル──文明監視の流儀(マックスとゼノン)

 文明監視員の朝は早い。

「おはようございます」
 M78星雲・光の国、文明監視本部。
 早朝にその門をくぐる、一人の男。
 ウルトラマンマックス……光の国が誇る、エリート文明監視員である。

 ──朝はいつもこれくらい早いんですか?
「いえ、こんなに早いのは出張に出る時くらいですよ。私も年次が上になってしまったものですから最近は若手に任せる事も多いんですが、まだ現場には出ていたいもので」
 ──出張とは?
「星に生まれた文明がどのような発展を遂げるのか、監視しに行く……我々の本業です。時には宇宙警備隊や宇宙科学技術局、はたまた他の惑星からの要請を受けて、宇宙全体に悪影響を及ぼしかねない文明を監視することもあります」
 ──監視するだけ、なのでしょうか。
「はい、基本的にはその星の文明には干渉しません。どのような発展をしようとも」

 マックスは出勤すると必ず、モーニングルーティンの一環としてフリースペースでコーヒーを一杯飲む。砂糖やミルクは入れず、ブラックである。
 そしてコーヒーと共に、既に頭に入れてある出張先の情報を何度も再確認する。
「地表の九割が水で覆われ、水中に住む種族が地上に住む種族を支配……根源的破滅招来体に由来する技術を所持……」
 そこに現れたのは、マックスと同じく文明監視員のウルトラマンである。
「おはようマックス、出張の時は相変わらず早いな」
「おはよう、ゼノン」
 ウルトラマンゼノンである。
「……ああ、お前の取材は今日だったか」
「そうだよ」

 ──ゼノンは、文明監視員としてどのようなお仕事を?
「マックスとそう変わりませんよ。ただ私は肩書き上では彼の上司に当たるので、基本的に光の国に常駐しています。時々現場に出ている監視員のフォローに向かうこともありますが」
「私も昔は助けられました」
「ははは。早く返せよマックスギャラクシー」
 ──上司と部下にしては、親しいご様子ですが
「歳が近いですし、年次もそう変わらないので。こいつが現場にいたがるものですから、仕方なく私が上司役になりました」
「本当に、ゼノンには助けられてばかりですよ」
「助けに行った先でゼットンに殺されかけた事もありますけどね」
 ──文明監視員であっても、怪獣との戦いは避けられないのでしょうか
「ケースバイケースです」
「おいマックス、ちゃんとクルーさんの方を見て喋れ。まあ、現場に出た先でウルトラマンを狙う通り魔的な奴に襲われることもありますよ……こいつの話ですが」
「平和な星を観測していたら通り魔に襲われて鏡に閉じ込められました。後輩のお陰で助かりましたが……」
 ──後輩というのは、文明監視員の?
「ああいえ。もっと広く、他の宇宙で活躍しているウルトラマンの後輩ですよ」
「こいつ、なまじ強いせいで文明監視員なのによく前線に出て行くんですよ……宇宙警備隊から引き抜かれかけたこともあるくらいで」
 ──それだけ強いのに、何故文明監視員に?
「簡単な話です。私はただ、この仕事が好きなんですよ」
「大した物好きですが、我々は何かと助かってますよ」

 そう語るマックスの横顔は、プロフェッショナルとしての誇りに満ちていた。そしてそれを見るゼノンもまた。
「さてマックス、そろそろミーティングの時間じゃないのか」
「そうだな」
 マックスは、出発前のミーティングに出席した。
 そこでは文明監視員達によって、監視先の文明の概要や環境、滞在期間の最後の確認が行われる。
「星の表面を覆う水についてですが、成分サンプルを解析したところ有毒性は無いため潜行は可能なものと思われます」
「重力・気圧についても活動可能な数値ですが大気の層が厚く、長時間地表付近に留まるのは難しいかと」
「滞在期間は予定通り、光の国基準三ヶ月で問題ないか?」
「問題ない」
 最後まで、全員が真剣な眼差しでミーティングを行っている。
 文明監視員は、怪獣や星人達から狙われる事も少なくない。命の危険と隣り合わせだが、命の危険を事前に回避出来るよう、現場に出る者に対するバックアップは万全に行われる。無論、現場に出る者も万全の準備を行った上で出発する。

 ──貴方にとって、文明監視員とは?
「……遺し、語るための仕事、ですかね。文明はいずれ滅びるかもしれません。星にも寿命はあります。避けられない滅びも、時にはあります。それでも、彼らがそこにいたのだということを、私は覚えていたい。そして後世に伝えたい。文明とは、彼らが確かにそこにいた証なのですから」
 ──そこにいた証、ですか。
「はい。少しでも彼らがそこにいたことを後世に伝えられたら、彼らがそこにいた事実は消えることはなく、彼らの存在が次の世代に繋がれていく……そう、思っています。勿論、滅びないに越したことはないですがね」

 マックスはゼノンに見送られ、異次元宇宙に繋がるゲートより光の国を出発した。
 その背中はどこまでも、プロフェッショナルとしての誇りに溢れていた。
 マックスを見送ったゼノンはこう語る。
「あいつは過去に一度、監視対象の惑星の原住民に干渉してしまったことがあります。ですがそれは、彼がどこまでも愛情を持って文明を見ていることの証明だと私は思っています。まああの時は若かったですし、私もその件で相当苦労させられましたが……」
 どこか遠い目をして苦笑しながらも、ゼノンはこう締め括った。
「すべての文明に愛を持って接しているから、いつか滅びるのだとしても彼らが忘れられること無いよう記録に留めておきたい……それがあいつの、プロフェッショナルとしての在り方なんですよ」

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これ書いたのギャラファイ2の前だったから「マックスはゼノンもしくは職場からマックスギャラクシーをずっと借りパクしている」って思ってたんですけどそんなことなかったですね。

この顔見たら(ゼット)

 宇宙警備隊に所属する者が覚えるべきことは多い。
 派遣先の星で使用される言語、怪獣の生態、効率的な戦闘術、その他諸々。その内の一つに「特定警戒対象リスト」なるものがあった。
 一般の警備隊員一人では到底対処しきれないレベルの怪獣や星人の顔写真と名前が掲載されたリストである。その内容は定期的に更新される。かつて最重要警戒レベルであったキングジョーやバードンは効率的な対処法が確立されて訓練カリキュラムに組み込まれるようになったことで要注意レベルに落とされ、「亜種やら新種やらがどんどん出てくる」という理由でゼットンは常に最重要警戒レベルに君臨し続けている。また、ギャラクトロンやルーゴサイトと言った光の国出身ではない戦士が戦った怪獣も最重要警戒レベルに掲載されるようになった。
 無論、そのリストの内容は一通り頭に叩き込んでおく必要がある。そして更新されればまた再度頭に叩き込まねばならない。その度に多くの宇宙警備隊員達は頭を抱える羽目になるのだが、ここにもそんな隊員……正確には宇宙警備隊候補生が、一人。
「くあーーーーっ、それにしても宇宙には危険なヤツがウルトラ多すぎるぜ……」
 ゼットは寮の自室でリストを眺めながら、そう嘆息した。
 悲しいかな、ゼットは記憶力が弱かった。度重なる補習と再試を繰り返してようやく座学の単位を取得した(人格者で知られるマン教授の眉間には皺が寄っていた)ことからもそれは伺える。
 そしてそうした経験の中でゼットが得た知見の一つが、「声に出して読むと割と覚えられる」であった。絶対に覚えられるというわけではないが、声に出さないよりはまし。そういうわけで今日もゼットはリストを声に出して読む。覚えられるかどうかは別の話だが、これでも根は真面目なのである。
 ただし声がでかすぎてうるさい、と先日に隣室から苦情が出たので、ボリュームは控えめである。
「最重要警戒レベル、『万が一復活した場合一般隊員ではどうにもならんのでまずはウルトラマンタロウを呼ぶこと。ちなみにこの手のやつは割と復活しがち』、えっなんでタロウ教官名指し⁉ 誰が書いてるんだろうなーこの説明文……ノリがウルトラ軽い……登録名『ダークルギエル』。怖そうな顔してんなー」
 何故タロウ教官名指しなのか、とは多くの警備隊員が突っ込むところなのだが、理由は簡単で、どういうわけかダークルギエルはフィジカル面でタロウに手も足も出ないからである。そしてそれを知っているのはタロウ本人とウルトラ兄弟の面々だけだったりする。だがゼットはそんな事情知る由もなく、また細かいことに長時間囚われない性格をしていたので、さっさと次のページをめくる。
「えーっと次は……要注意、『今のところ敵であるとは言い切れないがぶっちゃけ味方とも言い切れない』……ざっくりしてんなー。こんなやつもいるのか……えーっと、登録名『ジャグラス・ジャグラー』……トゲトゲしてるしそれに目付きも悪い……おっかねー!」
 ちなみにこの文章を書いたのは彼が師匠と(一方的に)崇めるゼロである。
 そんな事情も、そう遠くない未来にそのおっかない奴と自分……正確には自分と一つになる人間との間に浅からぬ因縁のようなものが生まれることになることも露知らず、ゼットは今日も元気にリストの音読に励むのだった。

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COSMOS(ジャスティス(ジュリ)とアヤノ)

※ジャスティスが遊星ジュランにたまに来ている設定

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 その星に降り立って人間の姿を取った時、最初に目に入ったのはゆるやかな坂の斜面一面に広がる花畑であった。桃、白、橙、赤、黄……色とりどりの花が、咲き乱れている。よく見れば全て似た形をした花で、これが人の手によるものであることは明白だった。
 私がその花畑に見入っていると、私を呼ぶ声がした。
「ジュリさーん!」
 春野アヤノ……この星の管理責任者でありウルトラマンコスモスと一つになった人間・春野ムサシの妻だ。ムサシと揃いの青い服の上からエプロンを着たアヤノは、手を振りながら駆けてくる。
「お久しぶりですー!」
「久しぶりだな、アヤノ。息災か」
「はい、皆とっても元気です。ソラは今、地球の学校なんでここにはいませんけど、とっても元気です。昨日会ったムサシが言ってたから間違いありません!」
「では、春野ムサシは今ここにはいないのか」
「はいー、地球に出張中です。あ、でもコスモスはいますよ。こことは反対側に」
「そうか」
「何かムサシとコスモスに用ですか?」
「いいや。近くに来たので、変わりはないかと寄っただけだ」
「変わりならありますよ、この前ミーニンの双子が誕生しました!」
「……そうか」
 つまりこの遊星ジュランは以前に私が訪れた時と変わらず、怪獣たちがのびのび生きているということなのだろう。
 春野ムサシとコスモスが目指した優しい世界が、この星では確かに実現しているのだ。
「では、この花畑は? 以前は無かったと記憶しているが」
「土壌環境の調査も兼ねて植えているもので、ジュリさんが前に来た時はここまでの広さじゃなかったから……。ここにはよく小型の怪獣たちも遊びに来るんですよ」
 そう語るアヤノの目は優しく、慈しみに満ちていた。花が風に揺れ、それに合わせて私とアヤノの髪も揺れる。
「……美しいな。これは、何という花だ?」
「コスモスって言うんです。ウルトラマンコスモスと同じ名前の、コスモスっていう花」
「コスモス、か」
 この花とあのウルトラマンの名が同じなのは偶然なのかもしれない。だが、風に揺らされてもしなやかに耐えながら優しく揺れる姿は、どことなくウルトラマンコスモスと春野ムサシの姿に重なった。
「ジュリさん、今日は泊まっていきます?」
「いいや、少し寄っただけだ。コスモスに声をかけたら、またこの星を去る」
「そうですかー。ムサシとソラにはよろしく言っておきます、またいつでも来てくださいね!」
「……ああ。必ず」
 「ジュリ」から私の本来の姿・「ジャスティス」に戻る。視界が高くなり、先まで同じ目線の高さにいたアヤノは遥か眼下に小さく見えるのみになった。
 大きく手を振るアヤノに一つ頷いて、飛び立つ。目指すはコスモスがいるというこの星の反対側。
 眼下では、広大な緑広がる大地の上で怪獣達が暮らしていた。ザンドリアスの群れが水場に集まり、ゴルメデの親子が山陰で穏やかに眠っている。
 途中、崖の上に腰掛けて大地を見渡すカオスヘッダーが見えた。私に気付いたカオスヘッダーは緩やかに手を振り、こう言うかのように微笑みながら首を傾げた。
 ──美しい星であろう?
 ああ、美しい星だとも。
 頷き返すと、カオスヘッダーの笑みが深くなったように見えた。

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私の知る君、知らない君(タロウ視点のギンガ+ゾフィー)

※ギンガS本編の後くらい

 そうか。ダークルギエルとギンガはかつて、ひとつの存在だったのか。
 ヒカルに憑依する形で地球に滞在していた期間の報告書を提出する羽目になった(人形やらブレスレットやらから元に戻ったばかりで体も凝ってるというのにゾフィー兄さんは人使いが荒い、とぼやきながらも)タロウは、端末の画面に表示されたまっさらな報告書フォーマットと向き合いながらギンガの正体について思い返していた。
 可能性の一つとして予測はしていたのだ。
 いくらギンガとルギエルが宿敵と言えど、その成り立ちが無関係な者同士であれば、全く同じ形状の武器を用いることはまずないであろう。体の同じ場所に光るクリスタルを宿すこともないであろう。
 その所有者達がかつて同一存在であったというならば、ギンガスパークとダークスパークが対を成して存在する事は頷ける。分かたれた陰と陽、その端的な象徴なのだから。
 そしてギンガの体に輝くクリスタルと対応するかのように、ダークルギエルの体にもまた、禍々しい赤い光が宿っている。
 ギンガは未来から来たウルトラマンである。だがダークスパークウォーズ当時の光の国に一度飛来して、そこでルギエルを封じるために力の全てを使い果たし、長い時をあの神社で眠って「選ばれし者」を待ち続けていたのだ……ギンガスパークの中で。
 ギンガの過去への来訪はルギエルを追ってのことであり、となると遥か未来の時間の中でギンガとルギエルは二つに分かたれたのであろう。
 世代から世代へ受け継がれる光を肯定した者と、生命の時間を止めることで死から救済しようとした者として。
 ──何を切っ掛けに、君達は命のあり方と向き合うようになったのだ?
 同一存在からの分裂という結果をもたらす程に衝撃的な何かが、あったのだろうか。そう、例えば……かつての彼らにとって誰よりも大切であった者の死、など。
 となるとどうしても思い浮かぶのが、あの青年……ヒカルのことだ。ウルトラマンに選ばれたとしても、彼はどこまでもただの地球人で、人間だ。
 ヒカルがいなくなった時、取り残されたギンガが何を思うのか。例えば、過去に遡りあらゆる生命体から「死」の概念を奪う為にあらゆる生命体の時を止めよう、などと極端な発想に至るなど。
 ──まさか、とは言い切れないのがギンガの恐ろしいところなのだが……。
 一度の分離を経てはいるものの、再会して以降のギンガはヒカルから離れようという意思を全く見せていない。
 多くのウルトラマンがそうして来たように、やがて変身者とは分離してこの広い宇宙を守るために地球を去って行く……そんな物は我関せずと言った風である。
 おまけにギンガが拘っているのはあくまでヒカルであって、地球ではない。それは彼らと過ごした時間の中で何となく分かってしまった。
 これが宇宙警備隊員のしていることなら大事になりかねないのだが、ギンガは宇宙警備隊員でもなんでもないのであった。
 どこから来たのか、どこへ行くのか、ギンガは黙して語らず。
 ──長く共に戦ったつもりでいたが、私は君についてはほとんど何も知らないのだな。
 思わず苦笑いがこぼれた。タロウがあの地球で過ごした期間で得たギンガについて知った事の殆どは、「ギンガ」ではなく「ヒカル」について。「ギンガ」がどのような存在かなのかすら、おぼろげにしか掴めていない。タロウですらそうなのだから、これから彼と共に戦うことになる者達は「ギンガ」の存在など気付きもしないのだろう。
 本当にヒカルがいなくなった時、ギンガは、ギンガを取り巻く環境は、我々は、どのように変わるのか。タロウは考えた。 
 それがいつになるのかは分からない。なにしろヒカルの住む宇宙は、このM78星雲を擁する宇宙とは時間の流れが大きく異なっているのだから。
 憂鬱な話だ、体感でほんの数日前まで共に過ごしていた青年がいなくなる瞬間について今から考えることになるとは。タロウは眉間を押さえて一つ溜息を吐き出した。光の国に帰ってきた途端に脳が己を宇宙警備隊の筆頭教官としての立場へと切り替えた。ヒカルと共にいた時の方が自分の立場を意識した振る舞いをする必要が無かった分気楽だったかもしれない、早く大きくなりたいと嘆いたりはしたが。
 考えたくない話だが、宇宙警備隊としては、今現在のギンガが将来的にルギエルを生み出す、あるいはルギエルそのものに「成る」可能性があるのならば、ギンガを監視し続けなければならない。それほどにルギエルは危険な存在だ。
「……それでも。私は、君たちの光を信じているよ。ヒカル、ギンガ」
 願うようにして呟く。
 未来は変えられる、それを何よりも信じているのはきっとギンガだ。だから彼はヒカルの持つ未来を求める力を信じて、彼を選んだのだ。
 どうか君の戦う理由が、未来を変える為であってほしい。
 口数少ない友人のことをも思いながら、タロウは端末に指を滑らせる。文字入力デバイスを呼び出し、報告書を書き始めた。
 書き出しは、そう。『これは、未来を変える為に戦った者の記録である』──

 ◆◆◆

「あのな、タロウ」
「はい、ゾフィー兄さん」
「確かに報告書を書いてほしいとは言ったけどね。長編小説を書けとは言ってない」
「私の滞在期間を考えればどうしてもこれくらいのボリュームにはなります」
「いやしかしこれ……なかなかの大作だぞ? 今すぐ印刷所に持っていってハードカバー製本出来るぞ?」
「でも全部読んだんでしょう?」
「読んだよ、面白かったさ。しかしここまでなっっっ……がい報告書書いて寄越してきたの地球赴任終えた時のメビウス以来だな……」
「知ってますよ、あれを最初に読んだの私ですから。それに地球滞在後の報告書提出がルールになったのはメビウスが赴任した頃からでは?」
「それはそうだが一旦置いておくとして。さてどうしようかこれ……一応ウルトラ兄弟全員読まないといけないが何しろとんでもなく長い……」
「読んでもらうしかないでしょう、メビウスの時みたいに」
「まあそれはね、でもこれを書いたのはお前だからね」
「……ゾフィー兄さんはどう思いました、ギンガとルギエルのことは」
「ああ……無論、気にはなったがね。だが、その時が来なければ何もわからない、そうだろう? 私達の中では最も彼らと近しい君が彼らを信じているのであれば、私から言うべきことは何もないさ」
「……ありがとうございます」
「ヒカリには何か小言くらいは言われるかもしれないがね、ははは」
「はは……」
「どうした、ヒカリがかつてハンターナイト・ツルギとやらを名乗っていた事でも思い出したか? それともベリアル、あるいはお前の友人のことか?」
「……わざと聞いているのでしょうが、ゾフィー兄さん。無神経と言われたことは?」
「時々ね。お前の気持ちも分からんでもないさ、『そうなった』実例を知っている以上、新しい友人の行く末を案じることは何もおかしいことではない。だが、そんな実例をいくつも知り、迷いながらも彼を信じる方を選ぶ事が出来る、それこそがお前の美徳であり、もしかしたら彼の……彼らの心の救いにもなり得る。私はそう思うよ」
「……ありがとうございます、ゾフィー兄さん」
「どういたしまして。しかしこれを読む限り、ギンガが選んだ青年はなかなか気持ちの良い性格をしているな。一度会ってみたいものだ」
「それはどうも。実際いい性格……もとい、心根真っ直ぐな青年です。時が来たら、光の国に呼ぼうかと考えています」
「いつ頃になるんだい、それは」
「まあ……そうですね」

「彼が更に戦士としての経験を積み……何人か後輩が出来る頃になったら、考えますよ」

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CVたけうちくんのゾフィーはこれくらのいい性格したこと言いそうだな……と思って書いた記憶がある。
声に引っ張られすぎでは

約二百倍年上の弟弟子(ギンガ&ジードもといヒカル&リク)

「ゼロに、弟子が出来たんですよ」
「へえ」
「ウルトラマンZっていうんですよ、宇宙警備隊の新人らしくて」
「はあ」
「素直でいい子なんですよ、いい子すぎて若干心配になりますけど」
「ふむ」
「で……その。Zが、僕のこと兄弟子って呼んで来るんですよね」
「……兄弟子。あ、Zから見ればジードは兄弟子って事か」
「まあ、はい。それで……その、Zの歳が」
「……もしかして。何千歳とかいう」
「そうなんですよー! 五千歳! だいたい五千歳なんですよZ!」
「ああーそれ俺がタイガに先輩って呼ばれた時と同じやつー!」
「僕まだ二十一ですよ! 元々ウルトラマンとして活動してる時は周りが年上ばっかりだったしそんなに気にしたことなかったですけど二百倍以上年上のZに兄弟子って呼ばれてどんな反応すればいいのかよく分かんないんですよ! いやほんと……こんなことギンガ……ヒカルさんにしか相談出来なくて……」
「お前と同じような状況になったことあるの俺しかいなさそうだもんな……複雑なのは分かるぜ……しかもゼロの弟子ですらないだろジード」
「ゼロのことは尊敬してますけど、弟子になった覚えはないですからね僕!」
「ゼロは俺とショウのこと弟子だと思ってるらしいけどな」
「ギンガ的にはどうなんですかそれ」
「否定するのも面倒だし別にいいかなって……でもジードのこと弟子だとは思ってないだろ、ゼロは」
「だと思いますけど……」
「それはそれとしてZはジードのこと」
「兄弟子だと思ってるんですよねえ……」
「それもう放っとくしかないだろ……」
「そうなんでしょうか……呼ばれる僕はどうしても年齢のこと考えちゃって複雑なんですけど……」
「あっちがこっちを兄とか先輩扱いしたらそれはもうそうなんだよ。ウルトラマンってそういうもんなんだよ」
「ゆるゆるですよね」
「ゆるゆる言うな」
「いやあ……でもやっぱりZの歳を考えると……それを言ったらタイガ達も僕よりはずっと年上ですけど……」
「こればっかりはなあ……」
「複雑です……」
「……なんか、頑張れよ」
「はい……」

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

ジードの、ゼロのことは大好きだし尊敬もしてるけどゼロの弟子扱いされると「弟子ではない」ってすぐに否定するところ好きです。

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ナイトティンバーから知らない音声が再生される不具合(ヒカリとビクトリー)

「ナイトティンバーが壊れた?」
「ああ。ビクトリーナイトになるには支障無いんだが、どうも調子が悪くてな……メンテナンスをして欲しい」
「いいだろう、見てみよう」
 M78星雲・光の国、宇宙科学技術局。その一室で、ウルトラマンビクトリーがナイトティンバーを手にウルトラマンヒカリと向かい合っていた。
「どのような不具合だ?」
 ビクトリーは静かにナイトティンバーを操作した。するとヒカリの声が朗々と室内に響き渡った。
『奏でろ‼‼‼‼ 勝利のメロディー‼‼‼‼』
「まず再生されるシステム音声がやたら大きい」
「確かに私が設定した時の倍以上は大きい気がするな」
「先日とうとうギンガから苦情が出た。正直うるさいと」
「由々しき事態だな」
 ヒカリは手元の端末に、不具合を記入する。ナイトティンバーの設計を思い出しながら、どの辺りの不具合なのか見当を付ける。
「システム音声のボリュームが大きいというと……音声の再生系統に不具合が出ているのかもしれないな」
「それだけではない」
「まだあるのか」
「ああ」
 近接戦で使うような武器だから丈夫に作ってあるし、そう簡単に不具合が出るような設計にはしていないつもりなのだが……内心でそう首を傾げながら、ビクトリーの言葉に耳を傾ける。
「全く覚えのないボイスが流れる」
「全く覚えのないボイス……?」
「見てもらった方が早い」
 ビクトリーがナイトティンバーのカバーを一回スライドさせた。
『ワン‼‼‼‼』
 続いて、二回。
『ツー‼‼‼‼』
 そして三回。
『スリー‼‼‼‼』
「ここまではいい」
「そうだな、仕様通りだ。しかしうるさいな……」
 別のシステム音声だからと言って音量が下がるわけでは無いらしかった。
「問題はここからだ。先日手元が狂って四回スライドさせてしまったんだが」
「まあそういうこともあるな」
「今までもそういうことはあったんだが……そういう時でも『スリー』までだった」
「そうなるように設計したからな」
「それがだな……」
 ビクトリーは渋い顔になり、ナイトティンバーのカバーを四回スライドさせた。
『こちらの動作はサポートされておりません』
 先までと打って変わって、静かな人工音声が流れた。
 聞き覚えのあるその音声にヒカリはしばし記憶を辿り、やがて思い出してぽんと手を叩いた。
「これは、科学技術局がライブラリに常備している汎用システム音声というやつだな」
 どこかで使うかもしれないと思ってナイトティンバー用音声データの中に入れておいた記憶が無くはない。
 ただ結果的に使うことは無かったし再生設定もしていないので、この音声が流れることはない筈だった。
「この声が出ても技は使えるんだが……ナイトティンバーからヒカリ以外の声がすると壊れたのではないかと思ってしまう」
「ああうん……それはそうかもしれないな……」
 まあこれは開発者の意図していない動作というやつなので立派な不具合という認識で相違ないのだが。
 ナイトティンバーはヒカリ自身がシステムボイスとして声を吹き込んでいる。ナイトティンバーは開発を急いでいたせいで他の誰かに固有システムボイスの吹き込みを頼む時間もなかったのだった……ということにしているが、正直吹き込むのは楽しかった。所謂深夜テンションだったと言える。メビウスには心配された。
「とりあえず私に見せてくれ。ナイトティンバーをどこかに強くぶつけたりとかは?」
「剣なので戦闘の度にだが……」
「……そうだな」
 ビクトリーから渡されたナイトティンバーはところどころ塗装が剥げ、傷や汚れも伺える。よく使い込まれているようで、開発者としては嬉しい限りである。メンテナンスついでに綺麗にしておこう。だがこの程度の傷なら想定の範囲内で、不具合が起きるような傷にも見えない。
「少し中を見てみないと分からないな……まず検査のために一日ほど預かりたいのだが構わないか?」
「ああ、俺もそのつもりで来ている」
 ビクトリーから承諾を受け、ヒカリはナイトティンバーの解析に取り掛かった。まず内部をスキャンし、不具合が起きている箇所を特定する。
 幸いにも今回の不具合の原因となっていそうな箇所はすぐに特定出来た。予想通り、音声再生系統の不具合のようだった。組み込んだマイクロチップの回路に傷が付いている。
 大方どこかで戦闘した怪獣の出す怪音波だか怪電波だかに当てられでもしたのだろう、とヒカリは結論付けた。無論それらへの対策は厳重にしているが、ナイトティンバーほど使い込まれていれば外部からの衝撃などで何らかの脆弱性も生まれるし、実際こういうことはナイトティンバー以外の武器でもよくある。
 ジードに持たせている諸々も一度メンテナンスが必要かもしれないな……そんなことを考えながら、ヒカリはナイトティンバーの修理を行う。現状で使用できる者がビクトリーしかいない特殊な武器だが、可能な限り替えのきくパーツを組み合わせて作っていた上に、その他の替えのきかないパーツが壊れている訳ではないのが幸いした。パーツの交換や簡単な修理、表面のクリーニングを行うことで、修理はすぐに完了した。
 翌日、改めて研究室を訪れたビクトリーにナイトティンバーを手渡す。
「幸いにも大した故障ではなかったからな、直しておいた。表面のキズなんかも綺麗にしておいたぞ」
「ありがとう」
 ナイトティンバーを受け取ったビクトリーは、すっかり綺麗になった愛刀をどこか嬉しそうに眺めている。やはり彼に預けて正解だったな、と心の内で頷きながら、ああそうだ、とヒカリは最後に付け足した。
「ついでにシステム音声全般のボリュームを初期設定から二段階ほど下げておいた」
「助かる」

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この話とは特に関係ないですがタイガスパークに闇落ち前のトレギアおじさんが声を吹き込んでたら大変なことになってたと思います。

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能ある鷹はなんとやら(ゼロ師弟)

「お前すっげえ歌上手いな……」
 光の国のとあるカラオケボックス。その一室で、ゼロは静かにそう呟いた。
「そ、そっすか⁉ いやあ、ゼロ師匠ほどでは!」
 片手にマイクを握りしめて照れながら頭を掻くのは、ゼロの自称弟子・ゼットである。
 俺今度の同期会の余興で歌う事になっちゃったんすよ! 宇宙警備隊随一の歌唱力を誇るゼロ師匠に是非! 是非ご指導ご鞭撻を! などと押しに押されて気が付けばカラオケボックスの中である。
「いや、俺の歌が上手いのは認めるけどよ。お前も相当上手いよ。俺が指導する必要多分無いよ」
「歌が上手いのはしっかり認めるゼロ師匠流石っす!」
「まあな上手いのは事実だしな? いやそういう事じゃなくて。お前その歌唱力どこに隠してたんだよ」
「隠してなんか〜! えへ、えへへ、まあ、ほら。能ある鷹は爪を隠すって、言うじゃないスか」
「いやあほんとごめんな……隠すほどの能はまだ無いと思ってたよ」
「ウルトラショック⁉」
 胸を押えて蹲るゼット。だがゼロとしては忌憚なき感想であった。
 ゼットは、驚くほど歌が美味かった。やや荒削りではあるが抜群の発声に遠くまで伸びるビブラート、正確な音程。
 しかもゼット、そのとんでもないクオリティの歌唱を踊りながらやるのである。なかなか激しいダンスであった。普通のウルトラマンは歌いながら踊れない。踊れるウルトラマンだってそんなにいない(ウルトラマンキングの誕生日をウルトラ戦士や怪獣総出で踊って祝ったことはあるらしいが、ゼロが生まれる前の話だ)。それも歌いながら踊れるとなるとなかなかいない。
 ただしゼロは歌いながら踊れる方だ。あとタイガも歌いながら踊れるかもしれない。まあそれはともかく。
 詰まる所、繰り返しになるが、これ歌に関しては俺から教えること特にねえだろ、というのがゼロの率直な所感である。
「大丈夫だよ、お前の歌唱力ならどこに出しても恥ずかしくねえって」
「そ、そうですかー!」
 ゼットはこれでもかと照れている。自分の才能に自覚が無いというのはそれはそれで恐ろしいな、とゼロは思った。
「ところでその余興とやらでは何を歌うんだ? 今の、その……お前の持ち歌か?」
「いえ、せっかくなので、当日リクエスト制にしようかと! 先輩方の勇姿を称える曲縛りで! 一通り歌えますよ俺、TAKE ME HIGHERも踊れます!」
「怖いもの無しかよ」
「あと色んなバルタン星人の物真似も出来るんで。初代とかJr.とかの! それもぶちかまして来ようかと!」
「同期会なのに気合い入りすぎだろお前……」
 自分の弟子になろうと毎日のように押し掛けてくるこの後輩、実は俺のキャパを越えているのでは……などと思ってしまうゼロであった。

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同じ月見て(我夢と藤宮)

※オーブオリジンサーガ付近くらい

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「むぐ……もしもし、高山です」
『ああ、我夢。俺だ。……お前、何か食べてるな?』
「月見食べてる」
『ああそうか……』
「藤宮は食べた? 今年も月見美味しいよ、今日は満月も綺麗だし」
『……そうか、偶然だな。俺も今さっき買ってきたところだ』
「え、それじゃ食べながら話そうよ」
『どうしてそうなる?』
「僕だけ食べてるのも悪いし。藤宮どこからかけて来てるの?」
『……自宅だが』
「じゃあ丁度いいよ、藤宮も食べよう」
『……はあーっ……(ガサガサ)(むしゃ)』
「だいたいなんでご飯買ってきたばっかりなのに僕に電話掛けて来たのさ」
『ん……外でするわけにはいかない話だ。手伝って欲しいことが出来た』
「高山我夢に、それともウルトラマンガイアに?」
『両方だ』
「オッケー。どんな用事?」
『以前から三陸沖に住んでいる怪獣が繁殖期に入る兆候を見せた。大人しい性格なんだが、繁殖期にはやや凶暴化する。そこで繁殖期の間だけ、港から少し遠い海まで運んでやりたい』
「それだったらアグル一人の方がいいんじゃない?」
『ああ、だが万が一ということもある。……それに、せめて出産が終わるまでは近くで見守っていたいんだが、それだと俺一人では限界がある。お前には怪獣のバイタル観察といざという時のなだめ役を手伝って欲しい』
「いいよ、じゃあ船とか借りなきゃ」
『ああ、その辺りの手配は俺がする。お前は週末に釜石の港まで来い、連絡してくれれば適当に拾う』
「了解。あーあ、しばらく休講かー。また大学に怒られるよ」
『それは悪いな……いや、お前この前今の時期は担当の講義が無いとか言ってなかったか?』
「ばれたか、もぐ」
『からかい方が雑だ』
「いつも藤宮があんまり気軽に僕を呼び出すからちょっとくらい自責の念を持ってもらった方がいいかなって思って。忘れてない? 僕大学教授なんだからね?」
『分かった、今回の件が終わったら何か奢る、それでいいか』
「いいよー、釜石って言ったらラーメンと海鮮だよね、楽しみだなあ」
『お前、食事中によく別の食べ物のこと考えられるな……』
「もちろん、月見も美味しいけどね。藤宮も好きなんだろ、月見」
『……まあ、嫌いではないな』
「満月の夜に食べる月見、いいよねえ。秋の風物時って感じで」
『ハンバーガーだけどな』
「秋にしか食べられないなら、それは立派な秋の風物詩だよ。こうやって同じ物を食べて、同じ月を見て、同じ秋を感じる事が出来る……風物詩ってそういうものだろ?」
『全く……いつから文系になった? あるいは酒でも飲んでるのか?』
「まさか。でも月があんまり綺麗だからそれには酔っちゃったかも」
『そうか。では今何徹目だ?』
「……二徹目かな」
『それ食べ終わったら歯磨いてさっさと寝ろ‼』

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